2001 年 98 巻 9 号 p. 1048-1059
Heatshock protein(hsp)65に対する免疫反応が炎症性腸疾患の病因に関与することが推定されている.hsp65のcDNAをコードするプラスミドDNAをリボソームを用いて,Wistarラット大腸粘膜に導入することにより,hsp65に対する全身系の液性および細胞性免疫が誘導された.さらに糞便中の抗hsp65IgA抗体測定(ELISA法)では,導入4週(40±9U/ml)後に対照(プラスミドDNAの皮下注射群)の4週値(8±5U/ml)に比して有意(p<0.05)な上昇を示し,消化管粘膜免疫反応が誘導されることが示された.しかし,hsp65に対する粘膜免疫反応が誘導されたラットにおいて大腸粘膜組織の障害は認められず,hsp65に対する粘膜免疫のみでは大腸粘膜障害はおきないと推定された.