20世紀半ばから増加し始めたがんは,21世紀に入っても,人口の高齢化と共に,増加し続けるものと推測されている.21世紀,われわれは,がん死亡を減少に転じさせることができるであろうか.そのためには,がん予防と難治性がん対策が決め手になるであろう.アメリカのがんが,年齢調整罹患率,死亡率共に,1992年以降減少に転じたのは,『Healthy People 2000』という総合的な予防対策の成果である.それにならってわが国でも『健康日本21』プロジェクトを発足させたが,肝心の喫煙対策が,政治的な理由により,なおざりにされている.治療成績が向上しているにもかかわらず,がんのイメージを悪くしているのは,5年生存率20%以下の難治性がんのためである.難治性がんを克服するためには,ブレークスルーとなるような研究が必要である.がん予防にしても,難治性がん対策にしても,ヒトゲノム解析のデータが大きな力になるであろう.