2002 年 99 巻 3 号 p. 289-294
症例は82歳,女性.坐骨神経痛に対し非ステロイド性抗炎症剤(non-steroidal antiinflammatory drugs;以下NSAID)を服用中に下痢が出現した.大腸内視鏡検査では回腸末端と全大腸にアフタ性病変が散在し,回腸末端,上行結腸,下行結腸,直腸からの生検組織で肉芽腫を認めたが臨床経過や内視鏡像からの腸結核やCrohn病は否定的であった.NSAID投与中止後,下痢とアフタ性病変は改善した.約2週間後,NSAIDを再投与されたところ下痢と回腸末端および全大腸にアフタ性病変が再出現したがNSAIDの中止により軽快し,臨床経過からNSAID起因性腸炎と診断した.肉芽腫をともなったNSAID起因性腸炎は極めてまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.