2002 年 99 巻 4 号 p. 386-390
症例は68歳の女性.上部消化管内視鏡検査で多発性胃カルチノイドと診断した.血清ガストリンは2248.8pg/mlと著しい高値を示し,抗壁細胞抗体も陽性でA型胃炎に発生した胃カルチノイドであった.幽門側胃切除術を施行し,術後血清ガストリンは正常化した.残胃のECM(endocrine cell micronest)およびカルチノイドは消失し,術後26カ月再発を認めていない.A型胃炎に発生する多発性胃カルチノイドの治療として,幽門側胃切除術が標準的胃切除術式になりうる可能性を示唆した症例である.