2002 年 99 巻 7 号 p. 769-778
内視鏡的・外科的に切除された大腸sm癌104例について1.sm浸潤距離の測定,2.a)前立腺癌で提唱されているGleason分類を応用した組織学的分化度のスコア化(modified Gleason's grading system)による組織学的再評価,2.b)細胞接着因子であるE-cadherinの免疫組織学的検討を行った.sm浸潤距離では1000μm未満でリンパ節転移した症例は1例も認めなかった.組織学的再評価ではhigh score群がリンパ節転移と相関し,low score群には1例もリンパ節転移は認めなかった.E-cadherinの免疫組織学的検討ではdestructive patternがリンパ節転移と相関し,腫瘍全体の分化度の低下の背景には細胞接着因子の減弱が関与していると考えられた.今回の検討により1000μm未満の症例は内視鏡治療の適応と考えられ,1000μm以上浸潤した症例でも組織学的再評価を加味することで,内視鏡的治療の適応拡大の可能性が示唆された.