日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
潰瘍性大腸炎に合併した隆起性病変の治療方針決定におけるp53免疫染色の有用性に関する検討
小林 拓岡村 正造大橋 信治浦野 文博金森 信一細井 努加古 訓之倉橋 正明瀬川 昂生前多 松喜
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2002 年 99 巻 8 号 p. 917-924

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抄録

‹目的・方法›潰瘍性大腸炎(以下UC)に合併した腺腫とdysplasia associated lesion or mass(以下DALM)の鑑別にはp53免疫染色が有用といわれている.今回,UCに合併した隆起性病変の治療方針決定に対するp53免疫染色の有用性を検討するために,癌4例・腺腫4例にp53免疫染色を施行した.‹結果›大腸癌の4例中3例と腺腫の4例中3例がp53免疫染色陽性であった.p53陽性をもってDALMと診断できるのであれば,大腸全摘が必要とされるが,われわれが大腸全摘を施行しなかったIs型のm癌1例とLSTおよびIIa型を呈した腺腫3例はp53免疫染色陽性であったにもかかわらず局所切除後1~10年の経過観察にて新たな腫瘍性病変の発生をみていない.‹結論›p53染色陽性であっても通常の腺腫や癌の形態を示す病変には平坦粘膜からdysplasiaが検出されないことを条件に局所切除が可能ではないかと考えられた.

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