香川大学看護学雑誌
Online ISSN : 2189-2970
Print ISSN : 1349-8673
ISSN-L : 1349-8673
日本におけるCOVID-19 パンデミック下の子どもの経験―フェーズ別整理と将来のパンデミック対応への示唆―
日本におけるCOVID-19パンデミック下の子どもの経験―フェーズ別整理と将来のパンデミック対応への示唆―
谷本 公重
著者情報
研究報告書・技術報告書 オープンアクセス HTML

2026 年 30 巻 1 号 p. 9-17

詳細
抄録

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおいて,子どもは成人に比べ重症化や死亡のリスクが低いと考えられてきた.そのため,感染対策は主として成人,とりわけ高齢者や基礎疾患を有する人々への対応を中心に進められてきた.一方で,子どもたちは長期にわたる感染対策や社会的制限の中で,教育環境や日常生活に大きな影響を受けてきた.

本稿は,日本におけるCOVID-19パンデミックをフェーズ別に整理し,各時期に子どもたちが経験した影響を小児看護学の視点から振り返るとともに,今後のパンデミックへの備えについて考察することを目的とする.対象期間は,2020年初頭の流行開始から,2023年にCOVID-19が感染症法上5類へ移行するまでとした.

流行初期には,十分な科学的知見が乏しい中で全国的な学校休校や外出制限が実施され,子どもたちの日常生活や学習環境は急激に変化した.その後,感染が長期化する中で分散登校やオンライン学習が導入されたが,デジタル環境へのアクセス格差や家庭内ストレスの増大といった課題が顕在化した.さらに,ワクチン接種の開始や変異株の出現により感染対策は継続され,子どもを取り巻く生活環境は長期にわたり影響を受け続けた.重症例は比較的少なかったものの,オミクロン株流行期の入院増加や小児多系統炎症性症候群(MIS-C)への懸念などは,子どもと家族の不安をより複雑なものとした.

パンデミックという非常時においても,子どもを「受け身の存在」として扱うのではなく,その声に耳を傾け,発達段階や生活背景を踏まえながら尊厳を守る視点が重要である.子どもたちの尊厳と日常を守ることは,将来世代の健康と社会の持続可能性を支える基盤であり,次なる危機に向けた最も本質的な備えであるとともに,持続可能な社会の実現につながる.

著者関連情報
© 2026,香川大学医学部看護学科

この記事はクリエイティブ・コモンズ[表示 4.0 国際]ランセンスの下に提供されています。
CCライセンスに基づいてご利用ください
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top