日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J09
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一般演題
腎性貧血と栄養状態
倉持 元長谷川 伸島 健二佐藤 舞子加藤 崇村山 正樹大島 和佳子
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抄録

目的:当院では血液透析患者の腎性貧血に対して、ヘマトクリット(Ht)値を30-35%に維持するようにエリスロポイエチン(EPO)製剤を用いた治療をしているが、これに対してHt値30%に達しない血液透析症例について検討したところ、これらの患者は、血清総蛋白(TP)値およびアルブミン値がともに有意に低値を示したことを報告した。そこで今回、透析患者の栄養面からの調査として血清アルブミン値を指標にして低値群(血清アルブミン値3.7g/dl 以下)と正常群(血清アルブミン値3.8g/dl 以上)とに分け、腎性貧血の各指標ごとの値を求め比較検討した。
方法:週3回維持血液透析を施行している130人において血清アルブミン低値群(31人、男21人、女10人)と正常群(99人、男69人、女30人)に分け、年齢、透析期間, 原疾患および血液生化学的指標として赤血球(RBC)値、ヘモグロビン(Hb)値、Ht値、総コレステロール(TC)値、フェリチン値、トランスフェリン(Tf)値、Fe値、TIBC値、トランスフェリン鉄飽和率(TSAT)値、iPTH値、 Kt/V値、EPO使用量/週について両群間で統計処理し比較検討した。 データはmean±SEMにて示し、統計処理はunpaired t testを用いて行った。
結果:血清アルブミン低値群では正常群に比べて年齢では有意に高値であったが、透析期間には有意差はなかった。また原疾患に関しては両群とも慢性糸球体腎炎が一番多く見られ、血清アルブミン低値群には特に腎硬化症の患者が多かったが、残りの疾患ではほぼ同様の傾向であった。 透析量を示すKt/V値に関しては両群とも同値であった。 また血液生化学的指標としては、血清アルブミン低値群ではRBC値、Hb値、Ht値、TP値、アルブミン値、TC値、Tf値は有意に低値であった。 またFe値、TIBC値は血清アルブミン低値群で有意に低値であったが、TSAT値、フェリチン値には有意差は認められなかった。 さらにiPTH値も有意差は認められなかった。EPO使用量/週は、血清アルブミン低値群では平均6000U/week、正常群では平均3348U/weekと低値群でのEPO使用量は有意に多かった。
考察:血清アルブミン低値群は、年齢による影響もあると思われたが正常群に比べて貧血傾向が強かった。 また血清鉄値は低値であったが、フェリチン値は高かった。 しかし総鉄結合能およびTf値が低値であり貯蔵鉄の有効利用の面で問題があるのではないかと考えられた。 さらにTf値自体も栄養状態の指標の1つであることからもこの貧血状態には低栄養状態の関与もあると思われた。
結論:これらの結果から血液透析患者ではEPO製剤による腎性貧血の改善度には、低栄養状態の関与の可能性もあり、この状態からの改善は、腎性貧血の改善およびEPO製剤の使用量の減量につながると考えられた。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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