日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1M09
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一般演題
フリースタイル分娩導入における仰臥位分娩との比較検討
*柳舘 文子岡崎 純子棗田 加代君崎 文代
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抄録

はじめに
 少子化が進み、数少ない分娩回数の中「自分らしく満足するお産」を求める産婦が増えている。しかし当院を選ぶ産婦は分娩に対し、安全性を求めると同時に医療者に「産ませてもらう」という依存的な意識が強い印象を受ける。当院選択者は出産そのものの主体性を重視するのではなく、緊急対応への安全面を優先していると思われる。そこで当院でフリースタイル分娩を取り入れたのをきっかけに、従来行なわれていた仰臥位分娩とフリースタイル分娩(以下、非仰臥位分娩とする)を比較検討することで、非仰臥位分娩のメリットを明確化し、当院を選択した産婦に広めていくことで、自らが望むお産ができるようにしていきたいと考え、本研究に臨んだ。
研究方法
1. 対象
 妊娠37週から42週未満の出生体重2500g以上4000g未満の児を経腟分娩で出産した初産婦43名  (内訳 非仰臥位分娩22名  非仰臥位分娩21名) 
(両者とも吸引分娩やクリステレル圧出法にて分娩となった場合を除く)
2. 研究方法  
(1)非仰臥位分娩群と仰臥位分娩群に分類し、記録上から以下の7項目を情報収集
・ 分娩第二期の所要時間 ・会陰切開の有無 ・会陰裂傷の有無 ・創部縫合の有無 ・脱肛の有無 ・出血量 ・アプガールスコア
(2)両群の比較はFisherの正確確率検定を行ない危険率5%をもって有意差ありとした。
3. 倫理的配慮 対象者のすべてをコード化し個人を特定できないようにした。
結果および考察
 対象の背景は両群ともに有意差は見られなかった。また分娩第2期の所要時間、出血量、出生児のアプガールスコアにおいても有意差は見られなかった。このことは分娩体位において異常出現の可能性に差がないのではないかと考えられる。分娩第2期の所要時間に差がないことは、この時期の体位を産婦本人が選択でき、そのことでよりリラックスできることにつながるのではないかと推察する。
 会陰裂傷の有無、会陰切開の有無では2群に有意差は見られなかったが、創部縫合の有無には有意差がみられた。(表1)医師が縫合しなくて良いと判断した裂傷では、創痛もほとんどなく、早期に治癒するため育児行動へスムーズに移れると考えられる。
表1 非仰臥位分娩群と仰臥位分娩群での出現比率の比較
以上のことから、当院で分娩をする産婦に対し、非仰臥位分娩は、仰臥位分娩と比較した7項目での安全性は劣らず、創部縫合が少ないというメリットがあるということがわかった。安全性が変わらないならば、自ら選んだ体位で分娩することが「自分らしく満足するお産」につながると思われる。
 今後、マザークラスや保健指導などで、フリースタイルをイメージできるよう勧めていき、産婦が自分たちでどのような分娩を望むか、主体的に考える機会を持ち、分娩=痛み、恐怖ではなく、人生の中でもっともよい体験になるように援助していきたい。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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