日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1D04
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一般演題
在宅家族介護者の介護負担感に関連するQOL要因の分析
宮下 光子酒井 真理子飯塚 浩美町田 玲子中村 光江横井 由美子戸村 成男
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抄録

1(はじめに)
介護の社会化を掲げて始められた介護保険だが、在宅介護の現場においては、今なお家族介護者の果たす役割は大きく家族介護者の献身的な役割意識に支えられているのも現実である。
「ずっと住み慣れた家で暮らしたい」という要介護者の望みをかなえるためには、ケアプランによる在宅サービスの調整と同時に介護者のQOLを高める支援が必要と考える。
そこで、本研究は、在宅介護者の介護負担感に関連するQOL要因を分析し、介護者および、要介護者が安心して在宅生活が継続できることを目的とする。
2(方法)
1)調査対象者:当居宅支援事業所利用者のうち調査該当者112名の中から承認が得られた69名。(調査該当者には倫理的配慮をもって趣旨・内容を説明した。)
2)調査期間:2004年6月1日-2004年10月30日
3)方法:質問紙に基づく聞き取り調査。
4)質問内容:介護者、要介護者の基本属性
WHO/QOL!)26、GDS!)15
介護負担感の質問票
3(結果)
介護者の状況は、主に高齢の女性が身近な親族の援助をうけながら、外に仕事を持たずに介護に専念している状況であった。要介護者の状況は、後期高齢者80%を占めていた。主たる病名は脳血管疾患と、骨・関節疾患で認知症を併発している利用者が15%であった。介護度は、要介護3以上が70%を占めていた。
質問票から、QOLの平均値は3.33であった。介護負担感は身体的QOLと負の相関(r=0.526、P<0.0001)が見られたが、心理的QOLと社会的QOLとは相関が見られなかった。介護負担感とうつは正の相関(r=0.537、P<0.0001)が見られた。うつ得点は平均4.16点であったが、6点以上のうつ傾向を示す介護者が27.5%であった。
4(考察)
以上の結果から、1)介護者の介護負担感は、身体的QOL要因によって大きく左右されることがわかった。介護に関する身体的QOL要因とは、腰痛、膝の痛み、睡眠不足等が挙げられる。これらの対策としては適度な介護休日と身体的に負担がかからない介護方法の指導、介護用品の活用等が考えられる。2)介護負担感が心理・社会的QOL要因に反映されなかったのは、介護者の殆どが高齢の女性であり、また、居住地域が農村部を含む地方都市ということから、介護に関する役割意識と地域性に由来するものと考える。
5(まとめ)
在宅介護者家族のQOLを高めるためには、1)介護者の身体的QOL要因に焦点をあてたアプローチが重要である。
2)心理・社会的QOL要因については、社会構造の変化にともない役割意識や地域性が変化すると思われる、社会構造の変化に対応した対策が今後の課題である。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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