日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2C10
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一般演題
鋼製製品に対する一次処理方法の統一化を試みて
岩堀 恭宏今喜多 静子
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抄録

I.はじめに,BR> 「鋼製製品(鑷子、鉗子、剪刀等)の染みや錆が目立つ」という指摘に対し、鋼製製品の使用後の取り扱い方法に関して調査を行った。結果、各部署で行なわれている一次処理方法に統一性がないことが明らかになった。そこで、一次処理方法を統一する事で業務の簡略化が図れ、消毒薬の使用量の減少にも繋がったので報告する。
II.研究方法
1.対象:看護師101名(手術室看護師を除く)
2.期間:平成16年10月から平成17年3月
3.調査方法:一次処理方法統一前後のアンケート調査
III.結果
 アンケート結果から(1)洗浄方法(2)洗浄後の処理方法(3)洗浄後の浸漬消毒について部署や個人で相違がみられた。具体的に(1)に関しては水洗いが27%、ポピヨドンスクラブ使用が57%、ピューラックス使用が3%、マスキン液使用が1%、食器用洗剤使用が12%であった。(2)(3)に関しては、洗浄後に浸漬消毒を行なっているという回答が78%で使用薬品はピューラックスとマスキン液に分かれ、人数の割合はほぼ半々であった。しかし同じ消毒薬でも希釈濃度は個人や同部署内でも相違があり、浸漬時間も30分から4時間の間でばらつきがみられた。そこで洗剤や消毒薬を用いない温水洗いのみの一次処理方法を導入した。方法は、使用後の鋼製製品を温水(約50℃)中で振り洗い、湯切りし「鋼製製品回収ボックス」に保管後中材担当者が回収・洗浄・消毒を行なうシステムを取り入れた。
 この方法を導入した結果、「一次消毒がなくなり業務時間が短縮出来た」「流し台付近に器械や消毒薬が散乱せず整理できた」「消毒薬の使用量が減少した」等の意見が聞かれた。
IV.考察
 処理方法統一前は、ステンレス性の鋼製製品の皮膜(酸化皮膜)にダメージを与える消毒薬(塩素を含むピューラックスやイソジン等)が使用されていた。また一般の食器用洗剤も有機化合物を多く含むため、皮膜を傷つける原因になる。これらの洗浄・消毒方法が染みや錆が目立つ原因ではないかと考える。統一後の処理方法でも水道水中の塩素の影響が懸念されるが、塩素は40℃から50℃で気化するというデータから温水での洗浄方法を取り入れた。さらに処理方法統一後のアンケートから消毒薬消費量の増減に関し、統一前後3か月について調査した。結果、ピューラックスについての有意差は無かったがマスキン液で46%、ポピヨドンスクラブで20%のコスト面での減少が見られた。一次処理方法を統一した事で、消毒に費やしていた業務時間を短縮する事が出来た。また、消毒薬の使用量が減少したことで消毒薬に掛かっていた費用の削減にも繋がったと考える。
V.まとめ
 今回の研究を通して鋼製製品使用後の一次処理方法の統一化を図ることが出来た。また改善したことによって業務の簡略化、さらには消毒薬のコスト面でも削減を図ることが出来た。今回の研究を基に、今後は効率的で正しい洗浄・消毒方法についてさらに学習を深め、積極的に鋼製製品の保守管理に努めていきたいと考える。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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