日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F08
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愛知県海部郡PSA検診と前立腺癌
山田 泰之神谷 浩行岡田 淳志
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キーワード: PSA検診, 前立腺癌
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抄録

 (緒言)前立腺癌は食事の欧米化と高齢化によって年々増え続けている。前立腺癌の死亡数は全癌(男性)の4%ではあるが、増加率ではNo1になっている。この背景には、前立腺疾患への認知度が高まってきたこと、全国の市町村で前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA検診が行なわれつつあることでさらに癌検出率が上がっていると考えられる。今回、愛知県海部郡でも平成16年6月から9月まで、初めての前立腺癌PSA検診が行われたのでその結果を報告する。
(結果)PSA検診を受けた1865例のうち、PSAが高値だったのは171例で、PSAが4から9.9までは120例、10以上は42例、不明9例であった。PSAの異常値である4以上の患者に生検がすすめられたが、30例は生検を拒否され、前立腺針生検を受けた患者は141例だった。生検をうけた年齢は、50代が9例(1.4%)、60代が50例(29.2%)、70代が87例(50.9%)、80代が17例(9.9%)、不明8例(4.7%)だった。
 生検の結果、前立腺癌だったのは51例で生検を受けた内の29.8%に癌を認めた。36例(21.1%)は前立腺肥大症、54例(31.6%)は異常なしと診断された。PSAが4-9.9での癌検出率は17.5%、PSAが10以上では64%と高率だった。
 海南病院での生検は73人に実施され、海部郡およ近隣の病院で生検されたうちの42.7%を占めていた。
(考察)前立腺癌の治療は早期の症例は手術治療、高齢者や浸潤癌の症例はホルモン治療を行なうのが一般的である。当院で癌と診断された患者、近隣病院から紹介された患者を含め、平成16年6月から平成17年3月までに当院で前立腺全摘術を施行したのは50例で、15年度の14例に比べると爆発的は増加であった。これはPSA検診の結果、前立腺癌患者が飛躍的に増加したと考えられる。
 今後のさらなる高齢化社会において、医師会と行政の協力によるPSA検診での早期前立腺癌の発見は、患者の生命予後に十分貢献するだろうと考えられ、さらにより多くの市町村でのPSA検診が望まれる。
 一方で、前立腺癌の中には臨床的に生命に影響を与えないようなラテント癌もあるとされており、治療しなくてもいいような前立腺癌も存在すると言われている。生検で見つかった前立腺癌を的確に将来予測できない現状では、診断されれば治療するしかないが、症例によっては無駄な治療になっている可能性もある。PSA検診による前立腺癌患者の急増は、我々泌尿器科医を悩ませる問題でもある。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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