日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1D11
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一般演題
介護に関する実態調査
!) 入院患者の家族へのアンケート調査を実施して !)
宇井 光柴田 ゆかり鈴木 美和澤田 美保子鈴木 梨恵大山 康子
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抄録

はじめに
 当院は高齢で身体的介護を必要とする者が多い。介護者の中には常に付き添っている家族もいれば、全く面会に来ない家族もいる。家族の介護に対する思いを把握し介護負担の軽減と看護のあり方を考えるためにアンケート調査を実施した。
対象及び方法
 平成16年11月1日時点で当院に入院している170名の患者の家族を対象に、介護に関する実態調査アンケートを実施した。
結果
 対象者170名のうち、128名の回答を取得した。現在病院で付き添っている者は34%、付き添っていない者は65%だった。付き添っている者では、24時間と回答した者が一番多かった。「付き添い者」としては配偶者、娘、嫁、息子の順で、「付き添う理由」は、患者が付き添いを希望するが一番多く、自分(家族)で世話したい・一人にするのが心配が同数だった。付き添っていない者の中から、「付き添えない理由」としては、病状が安定しており付き添いを必要としないが一番多く、続いて看護師に任せている、仕事や家事が忙しいの順だった。また交通手段がない・家が遠い為と回答した者は少数だった。「介護に対する関心度」の質問に対しては、非常にあると回答した者が44%、「介護負担」についてはあまり負担に思わないと回答した者が一番多く、非常に負担に思うは少ない結果だった。「主介護者の続柄」は配偶者、嫁、娘の順であり、病院で付き添っている者と比較し、嫁と娘の順位が逆転している結果となった。
考察
 アンケート調査から、付き添い者としては配偶者が一番多く、夫婦にとって互いに最も気がかりで心配な存在であることが考えられる。また嫁よりも娘の付き添いが多く、気兼ねなく看てもらいたいという思いがうかがえる。付き添い理由から、家族がいることで安心感が持てることや、患者の入院生活や治療に対する不安が大きいことが考えられる。また付き添っていない家族は様々な理由があり、多様な生活背景や価値観を持っているため、それぞれに応じた関わりを考えていく必要がある。介護の関心度については、非常に高く、家族も患者が心配、病状を知りたいなどの気持ちがあり、付き添いの後に安心して帰宅する家族もいるため、的確に病状や状況の説明を行ない、少しでも不安を軽減して安心感を与えることが重要であると考える。介護負担については、全体的に負担に感じていない者が多く、付き添っている場合でもあまり負担に感じていないという結果が得られた。家族にとって患者が大切な存在であり、負担というよりも支えていきたいという意見も多く、家族の絆を感じた。
まとめ
 入院することは患者だけでなく、家族にも及ぶ影響が大きいことが明らかになった。そのため、看護師は患者の情報だけでなく、家族構成やキーパーソンの把握・家族の生活状況・介護状況などの情報が大切であり、こうした背景を理解したうえで、患者と相互に関わる家族の生活状況や心理過程、援助の必要性を慎重にアセスメントし、適切な支援をしていく必要があると思われる。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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