日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2H07
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一般演題
後方椎体隅角解離に伴う腰椎椎間板ヘルニア
前原 秀二黒佐 義郎小島 秀治相澤 充萩尾 慎二青山 広道島谷 雅之多川 理沙
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抄録

〔緒言〕一般に椎間板ヘルニアは線維輪の亀裂部を通って内部の髄核が膨隆、脱出した状態を指す。椎体骨端核の成長障害(隅角解離)を伴った腰椎椎間板ヘルニアは発症の要因、手術法など一定の見解が得られていない。そこで、当科で経験した症例を検討し、考察を加えて報告する。
〔対象〕当院において2000年5月から2005年3月まで、腰椎椎間板ヘルニアの手術を99例に施行したが、9例(9.1%)に隅角解離を伴っていた。その内訳は13から50歳(10代:3例、20代:4例、30代:1例、50代:1例)であり、性別、スポーツ活動、職種、腰痛歴、症状、高位、術式について検討する。
〔結果〕男性4例、女性5例が隅角解離を伴っていた。学生(4例)ではスポーツ活動を活発に行っており、就労者(5例)においてもスポーツ歴があり、立位時間の長い職種が3例であった。腰背部痛の既往があり、スポーツ活動後あるいは就労後に発症していることが大半だが、1例は投球動作後に腰背部痛を自覚し発症している。高位別には、L4/5が5例、L5/Sが4例となった。術式は、両側拡大開窓4例、片側開窓3例、片側椎弓切除1例、内視鏡下ヘルニア摘出1例であった。骨片の処置を9例中3例に行った。骨片はエアードリル、キューサーなどを使用し切除した。何れも部分的切除によって神経根の可動性を得ることができた。また、術中脊髄造影を行ない、神経根の描出を確認した例もあった。術後経過期間は1か月から2年5か月であるが、何れも経過良好である。
〔考察〕隅角解離はスポーツや外傷などによる外力が急性、あるいは慢性の反復する機械的刺激となって、小児期の脆弱である軟骨及び骨性終板の間に亀裂を生じ、さらに同部に外力が加わると椎間板内圧が上昇して線維輪とともに隅角を後方へ移動させ生じるとされている。しかし、椎体終板骨折との説や、外傷とは無関係であるとの報告など一定の見解が得られていない。好発部位はL4下縁、S1上縁とされている。
 隅角解離を伴った腰椎椎間板ヘルニアの手術は骨性成分の除去が必要な場合、十分な視野の確保が重要となる。そのため、部分的あるいは一塊に椎弓切除を行ない隅角摘出する方法や、椎弓切除後に後方固定を行なう報告もある。また、隅角摘出が困難な場合、打ち込みを行なったり、処置しないとの報告もあり統一された見解はない。
 そこで当科の症例につき検討するとスポーツ歴や、活動性の高い例が大半である。また、若年期に腰痛歴があり、何らかの外力が誘引となっていることが考えられる。高位はL4下縁3例、L5上縁1例・下縁2例、S1上縁が3例であった。術式選択にあたり、十分な術前、術中の判断を要する。術前にヘルニア、骨片が神経根に及ぼす影響を推測し、開窓範囲を決定した。また、ヘルニア摘出後の神経根の可動性により骨片摘出の必要性を判断した。経過観察期間が短い例もあるが良好な成績を収めている。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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