日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2I07
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一卵性双生児(女児)に先天性歯が見られた1症例
戸田 牧子榎 正行
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抄録

新生児・乳児には特異的口腔疾患が見られる事がある。このほど当院で誕生した一卵性双生児(女児)に先天性歯が萌出した症例を経験したので報告する。
<緒言>
乳歯は生後5-7ヵ月に下顎前歯が萌出を開始するが、非常に早い時期に萌出する場合を先天性歯と言う。
  出産歯:出生時すでに萌出している
  新生歯:生後1ヵ月以内に萌出した場合
  その殆どが下顎A(下顎乳中切歯)である。
<症例>
本病院で平成16年に誕生した一卵性双生児(女児)に、日を異にして先天性歯の萌出が見られたので、その概要を報告する。
双胎児は36週と3日で誕生した低体重児であり、妹の方に生後4日で萌出、遅れる事25日の生後28日目に姉にも萌出が見られた。
<臨床所見>
現症から下顎乳中切歯の先天性歯と診断した。本双胎児の場合、特に児の哺乳障害、母親の乳腺炎などの問題はなかったが動揺が著しく、誤嚥が危惧されたので抜歯を施行、抜去歯は歯根が未完成でピンセットで容易に抜去可能だった。
<病理組織所見>
抜去歯の歯根に黄赤色の柔らかい組織が付着しており、病理組織診断を行なった。
中心に結合組織を見るが周囲は凝血でさらに表面を球菌のコロニーが多数取り巻いている。肉芽組織と診断し、malignancyの所見は認めない。

 病理的確定診断 「Granulation tissue with coccal colonies」

<考察>
先天性歯は日本においては0.1%程度の出現率であるが、海外では0.1%以下との報告で日本の方が出現頻度が高い。出現部位は殆どが下顎前歯(A)で、その出現率は先天性歯全体の83%以上と報告されており、過剰歯である場合もある。その原因は、遺伝、ビタミン不足 歯胚の位置異常、低出生体重などの諸説があるが定説はない。本症例も36週3日で誕生した低体重児であったが、因果関係は不明であった。
一卵性双生児ということから考えると、遺伝的要素が最も強いのではないかと推定された。Riga-Fede病は1857年、Cardarelliにより、乳児の舌下部潰瘍として最初に報告されている。1881年Rigaは限局性の腫瘍として、1890年にはFedeが組織学的研究を報告した。当時は南イタリアでの報告が多く見られたため、その地域の風土病と思われた時代もある。このような経緯を経た後、現在では新生児や乳児の舌下面に生じる辱創性潰瘍としての定義が確率している。先天性歯はRiga-Fede病の主原因と言われ、その研究が多く発表されている。
<結論>
女児の一卵性双生児に見られた先天性歯について若干の考察をした。本症例はRiga-Fede病には移行しなかったが、著しい動揺があったため誤嚥の恐れがあると推定し、萌出後まもなく抜歯し、治癒した。その後、双胎児は順調に発育し、9ヶ月で標準体重になり順調な発育を続けているが、咬合誘導上の問題も含めた定期的観察が必要と思われる。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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