日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2I10
会議情報

一般演題
脊椎骨転移検索における骨シンチグラフィーSPECT像の有用性について
Gd造影MRIとの比較
小野 尚輝新井原 泰隆石川 雅也浅井 太一郎大胡田 修三谷 登史恵島田 敏之佐藤 雅浩大川 伸一楠崎 浩之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

(はじめに)
骨シンチグラフィーは、悪性腫瘍の骨転移巣検出率が95%以上と高く、前立腺癌、乳癌、肺癌、神経芽細胞腫などによる転移性骨腫瘍の診断に欠かせない検査となっている。しかし、脊椎骨への集積が、骨転移による病的なものであるか否かの判定が困難である場合が少なくない。今回われわれは、骨シンチグラフィーのSPECT像を作成し、Gd造影MRI像との比較を行なって、転移性骨腫瘍の診断能につき検討し、その有用性が認められたので報告する。
(使用機器)
RI:GE横河メディカル社製 Millennium VG Hawkeye options(2検出器型)MR: GE横河メディカル社製 Signa MR/i Echo Speed Plus 1.5T Infinity Version
(対象と方法)
対象は、骨シンチグラフィーSPECT像を作成し、またGd造影MRIも行われた12症例である。方法は、骨シンチグラフィーとして、99mTc-MDPまたは99mTc-H-MDP 740MBq静注3時間後に、全身planar像(前、後面(それぞれ15分))を撮像後、集積を認めた脊椎のSPECT像(360度を60方向から収集(40秒/view×60projection)12分。(収集マトリックスは64×64、再構成はOSEM(ordered subset expectation maximization)法を用い、transaxial,sagittal,coronal像を得る)を撮像した。Gd造影MRIは、通常の脊椎MRI(T2強調画像、T1強調画像の矢状断)に加えて、fat SAT併用Gd造影T1強調画像にて矢状断を撮像した。
(結果)
12症例中10症例が骨シンチグラフィーSPECT像で骨棘への集積と診断され、Gd造影MRI検査と病巣部分が一致した。12症例中2症例は、骨シンチグラフィーSPECT、及びGd造影MRIで、転移と診断された。骨シンチplanar像では、判別困難な病巣部分でも、SPECTを追加撮像することにより、病巣の局所の診断が可能であった。
(考察)
悪性腫瘍の骨転移巣検出に全身骨のGd造影MRI検査を施行することは、Tim(Total imaging matrix)の可能な装置を除いて一般的ではない為、通常は全身骨シンチグラフィーのplanar像を撮影することが一般的である。この時脊椎に集積像を認めても、転移巣であるか否かの判定で困難である事が少なくない。通常の前面、後面像に加えてSPECTを行なう事でtransaxial,sagittal,coronal像を得る事により、集積の局在がより明らかとなる。中でも骨棘への集積である事が明かとなると、転移ではなく脊椎症の可能性が高くなる。SPECT像の撮像時間は、一部位あたり10分程度であり、予約検査に影響することなく随時行なえる。この事は骨シンチグラフィーの診断能を高め、造影MRIを加えて行なう症例を減らせる可能性があることを示唆している。その他、胸椎と重なり読影しにくい胸骨転移の検索、膀胱に溜まった尿の影響による骨盤骨の検索、肋骨と肩甲骨の検索などにもSPECT撮像は有効であると考えられた。

著者関連情報
© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top