日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J02
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厚生連施設の基準範囲と測定値
川村 真由岡田 元
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抄録

【はじめに】基準範囲とは、NCCLS等の設定方法に基づいて統計学的に算出された範囲である。しかし現状では、関連学会から提示されている病態識別値、試薬メーカー推奨の参考値、文献より引用した正常値など、設定方法は各施設により異なる。今回、病態識別値の提示されているグルコース・総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール・尿酸について、基準範囲と測定値の関係を評価したので報告する。
【方法】H16年度日本臨床衛生検査技師会 精度管理調査に参加した、厚生連90施設について比較・検討を行なった。
【結果】病態識別値として、グルコースは日本糖尿病学会による糖尿病判定基準、総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロールは日本動脈硬化学会による高脂血症の診断基準、尿酸は日本プリン・ピリミジン学会による高尿酸血症の診断基準をもちいている。グルコース110mg/dl未満を正常型とする病態識別値を用いる場合、基準範囲上限は109mg/dlとなるはずであるが、今回は110mg/dlも病態識別値を意識しているとして集計を行なった。また、総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール・尿酸も同様の方法で集計を行なった。厚生連90施設で、病態識別値を引用した基準範囲を設定している施設数(%)を下記表に示す。
厚生連施設で病態識別値を採用している施設数(%)は、LDLコレステロールを除く全項目で、全国における採用率を上回る結果であった。
基準範囲と測定値の関係を比較した結果、他の基準範囲を採用している施設の測定値と明らかな格差は認められなかった。
病態識別値を基準範囲として採用している厚生連施設の測定値は、方法間差が小さいグルコース・総コレステロール・中性脂肪・尿酸について全国集計と比較した結果、全項目でC.V.%(±3SD 2回除去)が全国集計より小さく、良好な収束を示した。
【まとめ】現在では、測定方法の標準化が進み、測定値の施設間差は非常に小さくなっている。しかし、基準範囲の統一化は未だ発展途上であり、今後の課題といえる。各学会から提示された病態識別値は、“共通のものさし”として有用であり、グルコース・総コレステロール・LDLコレステロールは80%以上の採用率となっている。今回の検討結果より、厚生連施設で基準範囲に病態識別値を採用している施設数(%)は全国水準であり、測定値との関係も良好であった。今後は厚生連組織による標準化活動を行ない、尚一層の基準範囲統一化が進むことを望む。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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