日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J06
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一般演題
糖尿病患者におけるヘモグロビンA1cと神経伝導検査
加納 孝子松下 次用鳥羽 貴子安藤 操吉田 正樹山瀬 裕彦
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抄録

【目的】
糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病性末梢神経障害の発症頻度は、年々糖尿病の増加と共に増えている事が、予測される。
そこで、今回我々は、ヘモグロビンA1cと神経伝導検査との関係を比較し、検討したので報告する。

【方法】
対照は、2004年1月から2005年3月までの期間で神経伝導検査を実施した30代から80代の糖尿病患者30名(男性17名、女性13名)である。検討項目は、へモグロビンA1cと上肢(正中神経)の運動神経伝導速度(moter nerve conduction velocity:MNCV)と知覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction velocity:SNCV)でそれぞれ潜時(Latency:Lat)振幅(Amplitude:Amp)持続(duration:Dur)伝導速度(nerve conduction velocity:NCV)と下肢の脛骨神経(MNCV);腓腹神経(SNCV)でそれぞれLat,Amp,Dur,NCVである。
方法としてヘモグロビンA1c(y軸)と上下肢のMNCV,SNCVのNCV,Lat,Amp、Dur(x軸)の相関を取った。Latにおいては刺激点から記録電極までの距離を上肢は70mm,下肢は100mmで補正した。
【結果】
上肢においてMNCVはNCVで相関係数r=0.3948 回帰式 y=-1.206x+64.1と負の相関傾向SNCVは、Ampでr=0.3577 y=-1.220x+23.0 と負の相関傾向が見られたが、他の項目に対しては、特に相関しなかった。
下肢においては、MNCV,SNCV共にDurにおいてそれぞれr=0.3643 y=0.183x+4.0,r=0.2136 y=0.170x+3.2と正の相関傾向が見られた。他の項目については、上肢と同様特に相関しなかった。
【まとめ】
上肢MNCVでヘモグロビンA1cが高くなると神経伝導速度が遅くなるという予測どおりの負の相関傾向となり、伝導速度が速くて太い神経線維の障害が考えられる。
しかし、これは手根管症侯群を併発している可能性があり、今後それを除外して検討する必要がある。SNCVでのAmpとの相関傾向は、神経線維の数の減少、太い線維が細くなるなど軸索変性が考えられる。
下肢MNCV,SNCV共に、Durとの相関傾向については、神経線維の同期性のバラつきが大きいことが考えられるが、生理学的に見ると、下肢のSNCVにおいては、NCVとの相関が一番強く現れる事が想定される為、技術的な問題があると思われるので、今後、技術面での改善を課題としたい。また、上肢、下肢との相関関係は、発表時までにまとめて追加報告したい。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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