日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C04
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一般演題
転倒・転落に有用な要因分析を取り入れて
加藤 和子大谷 優子
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キーワード: 転倒, 転落, 要因分析
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抄録

<緒言> 当病棟におけるH16年6月-17年3月までの転倒・転落アセスメントスケールによる危険度2は1日当たり平均8.1件、危険度3は、19.9件見られ、危険度の占める割合は56.7%を示した。この期間の転倒・転落は47件であった。スタッフがそれぞれ注意し行動していても転倒・転落事故の減少には至っていなかった。そこで、転倒・転落の事例を3つの要因で分析、アセスメントし改善策を検討、有効な対策が実践できること、また、スタッフのアセスメント能力を高めることを目的に取り組んだので報告する。
<病棟紹介> 脳神経外科・内分泌代謝内科
病床数:54床
(脳神経外科28床・内分泌代謝内科26床)
病床稼働率: 99.1% (H.18.3月現在)
看護度: 3.5点 
看護スタッフ数:26名 
看護方式:固定チームナーシング 
勤務体制:均等割3交替 
<方法>期間:H17年4月-12月 
H17年度事故対策委員及び小チームの協力を得て施行。実際の事例を患者側の要因・スタッフ側の要因・環境要因に分け全員で分析、それぞれの要因に対する対策を検討し実践。その後、各チームで事例検討を繰り返し、12月にアンケート調査を行った。
<結果> 期間中の転倒・転落アセスメントスケールによる危険度2は1日当たり平均9.8件、危険度3は19.6件見られ、危険度の占める割合は61.6%を示した。この期間の転倒・転落は51件であった。転倒6事例に対し転倒事故直後事例検討を行うことができた。3つの要因から事例を分析、対策を検討し実践、評価を行った。アンケート結果より要因分析の取り組みについて全員が有効との回答が得られた。中でも一番効果が見られたのは、看護計画への危険度2・3の明示と転倒・転落の既往の入力であった。このことにより、患者把握ができ転倒・転落への認識を深めることができた。2つめの効果として、安全確保に必要な物品の購入や環境整備などスタッフが関心をより深め環境因子対策を立てることができた。3つめの効果としては、アセスメント能力の向上である。以前は担当看護師がリスクレポートとして一人で事例をアセスメントし対策を検討していた。しかし、全員で事例を振り返る事によりお互いのアセスメント不足を補い学習の機会となった。そして、事例を検討していく中で全員の意識が向上し行動変容につながることができた。
これらの結果より、要因分析を取り入れた事例の検討は有効であったといえる。
<今後の展望>入院大半が脳血管疾患の回復過程にあり、患者の身体的状況とは相反しての行動が生じてしまい転倒・転落には限度があると考えられる。そんな中、患者・家族と情報を共有し一緒に話し合っていく必要性がある。また、患者・家族に不満・後悔が残らないように、納得のいく目標設定が必要である。したがって、日々の患者の状況・欲求を捉え達成可能なことから家族と共に見守りの中で支援していく。また、患者の動きを予測しチーム全体で転倒・転落防止に最大限努力していきたい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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