日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C10
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大腿骨転子部骨折に対するDYAX‐Aネイルの治療成績
倉橋 俊和浦田 士郎鈴木 和広田中 健司小口 武吉田 亜紀子新井 哲也浅井 秀司加藤 宗一
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抄録

<緒言>我々は2003年7月から2005年11月まで大腿骨転子部骨折に対する内固定材料にDYAX-Aネイルを用いており、その治療成績を報告する。
<対象および方法>2003年7月から2005年11月までに当院で手術治療を行った大腿骨転子部骨折は120例であり、そのうちDYAX-Aネイルで治療した症例は108例であった。そのうち、病的骨折であった2例および術後フォロー中に死亡した3例を除く103例を対象とした。内訳は女性78例、男性25例、手術時平均年齢は80.9歳であった。受傷側は左53例、右50例であり、骨折型はJensen typeI 12例、typeII 43例、typeIII 10例、typeIV 32例、typeV 6例であった。手術待機期間は平均5.9日、経過追跡期間は平均7.2ヵ月であった。手術方法は原則として遠位径10mmのネイルを使用し、極端に髄腔の広い症例には遠位径12mmのネイルを用いた。安定型の症例(Jensen typeI、II)には遠位横止めスクリューは使用せず、不安定型(Jensen typeIII‐V)には遠位ロッキングスクリューを1本使用した。後療法は術後翌日から可及的に全荷重歩行を許可した。
 検討項目は(1)術後6ヵ月での頚体角(健側との差)、(2)受傷前と術後6ヵ月での歩行能力の変化、(3)術後合併症とした。歩行能力についてはランクJ:屋外レベル(独歩、杖歩行)、ランクA:屋内レベル(歩行器歩行、伝い歩き)、ランクB:車椅子生活、ランクC:寝たきり)の4ランクに分類した。
<結果>
 (1)患側の術後6ヵ月での頚体角は平均131度であり、健側の頚体角の平均132度と比較してその差は‐1度であった。
 (2)術後6ヵ月の時点で受傷前の歩行能力を維持できたのは64例(62.1%)、1ランク低下は28例(27.2%)、2ランク低下が11例(10.7%)であり、3ランク低下した症例はなかった。骨折型別で検討すると、安定型55例で受傷前歩行能力を維持できた症例は31例(56.3%)、1ランク低下は19例(34.5%)、2ランク低下は5例(9.1%)であり、不安定型48例では受傷前歩行能力を維持できた症例は33例(68.8%)、1ランク低下は9例(18.8%)、2ランク低下は6例(12.5%)であった。
 (3)術後合併症はラグスクリューのcut outが2例、ラグスクリューの骨頭穿孔が2例で生じた。術後2次的骨折が3例で生じ、いずれも骨癒合前に転倒(術後29日目、36日目、23日目)して発症していた。
<考察>DYAX-Aネイルは大腿骨転子部骨折に対して良好な骨癒合を得ることができ、術後頚体角の減少も軽度であった。骨折型に関わらず早期離床が可能であり、不安定型であった症例でも69%で受傷前の歩行能力を維持することができた。
 術後合併症として二次的骨折が3例生じており、術後3‐4週の骨癒合前に転倒すると骨折を起こしやすいと考えられた。遠位横止めスクリューの観点からは一定の見解は得られなかった。術後3‐4週はまだ骨癒合が不完全である一方で、術後リハビリがある程度進んで歩行可能となる時期であるため逆に転倒しやすく、十分な注意が必要である。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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