日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B11
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一般演題
がん診療連携拠点病院におけるがん登録の役割
田中 彩羽毛田 梢宇梶 一樹新津 理絵須田 茂男細井 泰子荒井 季彦依田 尚美西澤 延宏夏川 周介
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抄録

【はじめに】当院の位置する旧南佐久郡および佐久市を含む地域は東信地区と呼ばれているが、この地区には、佐久保健所が管轄する地域がん登録システムがある。地域の医師会が主体となってがん登録委員会が設置されており、当院と佐久市の佐久市立国保浅間総合病院が実務を担当している。旧南佐久郡は厚生労働省の(当院担当)、旧佐久市は文部科学省の(浅間総合病院担当)がんコホート研究対象地域に指定されたことから、この地域にがん登録システムが整備された。 【取り組み】当院はスタート当初の1990年より参画している。地域がん登録では、登録の精度が問題となる。死亡情報で初めて登録された割合(DCN:Death Certificate Notification)が少ない、つまり入院時にすでに登録されている割合が多いほど登録の精度は高くなり、死亡情報から生前の遡及調査ができなかった割合(DCO:Death Certificate Only)が少ないほど登録精度が高くなるとされている。 【結果・考察】佐久地域のがん登録システムのうち、旧南佐久地域のみのデータでは、罹患数が4,056人、うちがん死が1,636人、DCNが6.6%、DCOが2.9%である。国際的な地域がん登録システムへの加入資格は、DCOが10%以下とされており、旧南佐久地域におけるがん登録システムは、規模は小さいが十分に精度が高いと考えられる。旧南佐久地域におけるがんの罹患数と死亡数を臓器別にみると、例えば胃がんと肺がんの罹患数には大きな差があるが、死亡数はほぼ同等であることがわかる。また、肺がんでは、近年、女性を含め罹患数が増加しているが、ヘリカルCT検診車を導入した2001年以降は早期がんの発見が増え、死亡数は減少している。今後も罹患数と死亡数の乖離が続けば、検診の効果といえるのではないかと考えている。また、検診発見群の10年実測生存率は、非検診発見群に比べ有意に良好であることも確認された。 【まとめ】このように、地域がん登録で得られたデータを分析することにより、その地域において、どの種類のがんが予後不良であるかといった、がんの種類による傾向が浮き彫りにされる。今後、地域における包括的ながん医療の戦略を立てるにあたり、地域がん登録の重要性はますます高まると考えられる。また、地域がん登録を導入することで、各施設や地域全体の診療を客観的に評価し、医療の質の向上や標準化も可能となる。さらに、地域がん登録をただ導入するだけでなく、がん登録セミナーなど開催し、実務者のレベルアップを図ることが急務と考えられる。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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