日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: kanaishou
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金井賞受賞講演
「助け合いの心」で、安心して暮らせる心豊かな地域づくりを目指して
小林 和衛
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抄録

1.(文字数オーバーの為概要省略・抄録集をご参照下さい。) 2.助け合い組織の設立 年々、地域の高齢化率が上昇するなかで、平成9年8月にJA独自に「家庭介護アンケート調査」を行った結果、将来寝たきりや独り暮らしになった時に不安を感じる人が多く見られ、家庭で介護できるヘルパーなどの手助けがほしいと考える家庭が多いことがわかりました。 以前からJA女性部組織では、JA新潟厚生連長岡中央綜合病院協力のもと、「家庭介護教室」や、マンパワー育成に向けた「ホームヘルパー養成研修会」に取り組み、高齢者福祉への対応を進めてきました。 こうした背景を踏まえ、JAとして高齢社会に対応していくため、教室受講者やヘルパー有資格者を中心に、同年10月「高齢者助け合い組織」を設立(設立当時、協力会員51名(うちヘルパー資格者24名)、賛助会員49名)。「高齢者や家族が安心して暮らせる地域づくり」を目指して、会員の助け合い活動がスタートしました。 3.介護事業が本格化 活動を始めてからは、平成12年4月の介護保険制度施行にともない指定訪問介護サービスへ移行するなど、同年12月には厚生連病院の協力で「居宅介護支援事業所」を立ち上げるまでに至り、JA合併を契機に、訪問介護2ヵ所と居宅介護支援2ヵ所を長岡・栃尾各地域の拠点として、介護事業が本格化しました。訪問介護サービスでは、毎月定例のヘルパー会議等で情報の共有と、厚生連病院の協力を得ながら各種研修会や介護技術と資質向上に取り組んでいます。併せてヘルパーの養成も毎年実施し、これまで400人余りを地域に送り出しています。  地域の助け合い活動では、地域単位のミニデイサービス、病院や施設への地域ボランティアなど、支援活動の幅が年々広がるにつれて、会員同士の気運も高まり、自主的な意見や発想が出てくるようになりました。  高齢者が生きがいを持って暮らせる支えとして、介護保険適用外の対象者に実施しているミニデイサービス(長岡地区)では、単に会食などのふれあいの場を提供するだけでなく、「高齢者自身で何かできることはないか」と新しい視点の提案がありました。病院の検査などで使うことを目的に、ガーゼにチリ紙を挟んでたたむといった簡単な作業ですが、いまの自分でも社会や地域に役立っているという意識が、利用者の生きがいや張り合いにつながると考えました。こうした作業を続けるうちに、利用者からも「元気が出てきた、仕事が楽しい」と喜ぶ声も聞かれるようになり、平成18年度は13会場で455人から参加いただくなど地元に定着してきています。  助け合いの輪が広がるなかで、地域女性を中心に、病院・施設等で積極的なボランティア活動が活発化してきました。先進的にボランティア活動に取り組んでいた栃尾地区では、旧栃尾市から委託で行った配食サービス(行政合併によりH19年終了)や軽度生活援助のほか、特養ホームでの週5回の介助支援、栃尾郷病院でベッド清掃やシーツ交換を週1回継続実施するなど、活動範囲や目的別に独自の会を発足して、より地域に深く入り込んだ活動を展開しています。また長岡地区でも、長岡中央綜合病院の新設移転に伴い、車イス磨きなどの機材清掃を2ヵ月に1回、定例で行う病院ボランティアの新しい分野にも取り組み始めました。さらに、口コミなどで取り組みを聞いた女性部以外の方からも、「ぜひ協力したい」との声が広がるなど、波及効果も生まれています。 こうした様々な活動や地域との交流を通して、会員同士の意識を高めることはもちろん、地域の核となる厚生連病院と連携を密にしながら、助け合いの輪を広げていくことが豊かな地域を育てることにつながっていくと考えます。誰もが支え合い、助け合える地域になるために、「助け合い組織にできることは何か」を追求しながら、基本である「高齢者が安心して暮らせる地域」の実現を目指して、これからも活動を継続していきたいと思います。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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