日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: sympo-1
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シンポジウム-1
研修医の集まる病院を
中村 正明
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抄録

【当院における医師不足の実情】 医師の地域偏在、診療科偏在はここ数年の問題ではない。いわゆる医師の地域格差は増大する医師の職務に対して医師の絶対数の不足が根本原因である。偏在はその表現様式にすぎない。 当院の医師数は今まで充足率100%を目標にぎりぎりの医師数による診療を余儀なくされていた。平成18年に循環器内科において医局派遣の医師引き上げが行われた。医局の派遣病院の見直しがその理由であるが、新臨床研修制度の間接的影響であると考えられる。 循環器内科は診療の要であり、病院経営上も影響大であった。地域住民には他の診療科においても医師不足をきたしているという風評も与えてしまった。 【医師不足と新臨床研修制度】  新臨床研修制度は従来からあった医師不足を顕在化させた。研修病院を選ぶという事と病院の選別が混同されることになった。意図的かどうかは不明だが、良い研修病院は良い臨床病院という単純化した図式を提供することになった。そのため地域医療に精励している病院の評価が決して高くないのは残念である。  一方では、研修医も常勤医数に算定される現在の制度上研修医はありがたい存在である。当院の医師充足率は研修医によって支えられていると言っても過言ではない。 【当院の医師確保対策】  医師確保においては医局に頼らざるを得ないのが実情である。医局も派遣受け入れ病院も制度が安定する数年後まで忍耐の時である。それまでは従来通りの地縁、血縁による医師確保をせざるを得ない。しかしながら人材確保が定期的ではなくまた計画的にいかない事が悩みである。  前述したように新研修制度を巧みに利用することは病院の評価の上でも、医師確保の上でも重要である。研修医が来ない病院は常勤医も来ないと理解すべきである。  当院では医師確保対策は同時に研修医確保対策でもある。研修医に病院を理解してもらう事が研修病院選定の最重要事項である。そのため医学生の病院見学を重視している。研修医や指導医との対話により病院の実際を知ってもらう事が基本である。秋田大学、東北大学の地域医療実習の協力病院であるが、実習生の中から翌年の研修医になることが多い。 【秋田県厚生連の医師確保対策】  秋田県厚生連では平成18年院長会議に医師確保対策委員会を併設した。 秋田県厚生連の医師確保対策の一つは県内厚生連病院の相互協力体制である。湖東総合病院における外科医師不足、当院における循環器内科医師不足に際しては県内厚生連の各病院から外来医師支援、病棟医師支援を相互に行った。  新臨床研修制度に関しては研修指導医講習会を秋田県厚生連単独で開催した。秋田県厚生連の一体感を高めることができ、好評であった。秋田県主催の指導医講習も厚生連が主体となって行っている。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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