日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: sympo-2
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シンポジウム-2
地域医療の再構築
佐渡における現状と課題
服部  晃
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抄録

東京都23区の1.5倍の土地に6.7万人が住む佐渡は独立した医療圏であり自然の恵みと伝統文化は豊かであるが、わが国の30年先の高齢化(35%)、人口減(年約800)、多数の独居老人を抱えるなど、30年先の地域医療の問題点を抱えている。 22診療科、422床の当院は島の中央に位置し文字通り中核病院として稼動しているが、医師・看護師などスタッフ不足で、病院新築を2・3年後に控えて課題も多い。島内医師数は94名、10万人あたり141と佐渡全体が医師不足である。新潟県二次医療圏7中4位。当院は全島の救急搬送の70%、時間外患者の80%を担当している。医師会(21診療所)や他の5病院と連携し、医療ネットワークにより医療レベルの向上と普遍化を図ろうと、医師総動員体制を呼び掛けている。現状と問題点・課題を紹介したい。 佐渡市:平成16年3月10市町村合併により誕生し2市立病院を抱える市に対し、法定合併協議会、新市ビジョン策定委員会、また佐渡市医療計画策定委員会を通じて、医療の一元的運営、 他の地域医療機関への援助、また当院の新築への協力を依頼してきた。 医師会:当院内に医師会事務所がある歴史を生かし、理事会や医師会講演会、佐渡医療シンポジウム、佐渡病院医学集談会の開催、また糖尿病を考える会などを通じて良好な関係を保っている。 医療ネットワーク:5中3病院(市立病院を含む)への当院からの医師助勤と他病院および診療所間の助勤を延べ13診療科(含ドック、日当直)について、常勤換算で約3.1相当行なっている。当院への消化器部門の検査援助も検討中。 一般住民:病院祭(来場者7-5000)、医療の出前、小さな音楽会、患者会により当院への理解を深めて貰う。 医師確保:新潟大が中心であるが、臨床研修義務化以来大学医局が弱体化し、麻酔科などで現状維持が困難になりつつある。その中で4月より県の配慮で県条例の改正の結果、自治医大医師を1名確保できた。なお医師充足率は当院約80%、その他の病院約70-80%。研修医の研修および待遇、環境の充実に努め、HP・民間ドクターバンクの活用により、改善したい。 課題と問題:オープンベッド制は第一回アンケート調査で成立せず、再調査中。看護師の早期および中期退職の防止・減少。市立2病院との運営一元化、新病院への佐渡市の援助依頼、依然として強い市立病院への愛着(旧市民意識)の解消。一次救急センターの設立に向けた医師会、市への働きかけ。 おわりに 当院が担当すべき医療は、救急、急性期および専門医療、それに地域病院としての慢性期医療と考えられる。医療ネットワークの構築には佐渡全体としての発想を医療関係者全員が持つ事が出来るか否か鍵となるが、国の慢性期医療政策の行方が気になる。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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