日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop-1
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ワークショップ-1
院内感染の現況と予防対策
外山 譲二松井 遵一郎
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抄録

わが国で院内感染が社会問題化したのは1980年代に入ってからであり、薬剤耐性菌、なかでもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が中心であった。中小病院の多い全国の厚生連病院も例外なくその対策に追われるようになった。その後1996年の診療報酬改定「院内感染防止対策加算」(5点/日)により急速に意識が高まり、2000年には「院内感染防止対策未実施減算」となってからは、ほとんどの病院で感染予防対策委員会(ICC)や感染予防対策チーム(ICT)を組織するようになった。しかし、現実にはなお難題が山積しており、実際に院内感染対策に携わっている関係者の苦労は大きい。今回は、出来るだけ多くの施設の予防対策に生かせるようにワークショップを企画した。 全国の厚生連病院には、さまざまな規模やタイプの医療機関があり、付属する施設も多様であることから一様に予防対策を論ずることは難しい。従って、組織のあり方や理想型を求めるのではなく、現場で直面している具体的な菌やウイルスに対して、実際例をとりあげてその予防対策について発表していただくこととした。演者は、出来るだけ幅広く身近な病院規模や職種の中から、実際に中心になって活動している方々を選ばせていただいた。院内感染は疾患や感染経路が多種多様であり、時間の制約から取り上げる主題は限定せざるを得なかった。今後の予防対策の一助になることを願っている  結核やレジオネラなどの空気感染は、陰圧隔離室もなく予防対策が不充分な中小病院や介護施設などでは、患者の発見が遅れると大きな問題となる。特に結核は高齢化により日本ではまだまだ発症が減っておらず、若い医療従事者への感染や施設でのアウトブレイクも起きている。結核における感染、発病の判定や予防対策(ワクチンなど)のスタンダードは専門医の間でも充分に確立していないのが現状である。そんな中で結核については、専門医の立場からと介護施設での対策について取り上げていただくこととした。  薬剤耐性菌については、長い間MRSAの対策が主体であった。免疫不全や重症患者を抱える急性期病院では、経済的な側面も含めてまだまだ課題は多い。一方、近年新たな薬剤耐性菌として、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、βラクタマーゼ産生グラム陰性菌(ESBL)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)などが問題となってきた。薬剤耐性菌は、病棟や手術場などでの対策が主体であり、ICCやICTが確立している病院では、医師以外の職種の人たちが中心に活動するようになって来ている。しかし、200床未満の病院では、さまざまな制約の中で献身的な医師が指導していることが多い。そこで、今回は医師、薬剤師、看護師(ICN)のそれぞれの立場から、薬剤耐性菌の経験と予防対策を報告していただくことにした。  全国の厚生連病院には、関連の介護施設や訪問看護などを運営している医療機関もたくさんある。これらの所ではインフルエンザやノロウイルスの感染予防は最も身近で頻度の高い問題である。特にノロウイルス感染は院内感染としてアウトブレイクする可能性が高く、病院の規模や施設を問わず、予防対策には充分な注意を払う必要がある。介護施設では診断が遅れると疥癬の集団発生が見られることもある。今回は病院、介護施設、訪問看護なども含めたこれらの疾患の予防対策について、それぞれの立場からの報告をお願いした。  今回演者と演題の内容の選定後に全国的に麻疹の流行が広まった。麻疹をはじめ風疹、水痘、流行性耳下腺炎、パルボウイルスなども現場では大きな問題となっている。時間が許されるならこれについてもディスカッションで触れてみたい。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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