日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop-1
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ワークショップ-1
介護施設における結核や疥癬などの感染対策
島崎  豊
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抄録

【はじめに】 近年は、高齢者社会の到来により介護施設利用者が急増しており、利用者や職員の健康を守るため、施設内における感染対策の重要性が問われる時代となっている。  施設を利用する90%以上の高齢者は、循環器疾患、脳疾患、呼吸器疾患、糖尿病などを既往しており、入院治療の際に病院などで感染した利用者も少なくない。 また、糖尿病や化学療法などで免疫力の低下した、易感染状態にある利用者も多く、感染症に関してはハイリスク集団である。介護施設における感染対策は、今日の科学的根拠のない対策も散見され、利用者や職員の安全が確保されていないなど問題を残している。今回は、介護施設に対する当院の取り組みと感染対策の現状について報告する。 【当院の取り組み】  当院は、地域医療の基幹病院として、急性期医療を中心にリハビリテーションから慢性期、在宅医療という医療分野、介護部門を中心とする福祉分野まで担う施設である。感染対策においては、院内の介護施設を始め地域の施設までを範疇として、定期的な研修会を院内外で開催し啓蒙すると共に、地域のネットワークを構築し個別のコンサルテーションも展開している。 【結核の感染対策】  結核の感染対策の問題点として、_丸1_若年者の大部分が結核に未感染である。_丸2_医師や職員の認識不足。などがあり排菌している利用者の対応が遅れて施設内での集団感染につながる危険性が指摘されている。結核の自覚症状は、咳、痰、微熱、全身倦怠、体重減少が多く、特に咳や痰が二週間以上持続している場合は結核を疑うことが必要であるが、高齢者の場合は、咳や痰がないことも多いため発見が遅れる要因になっている。 職員採用時のツ反(二段階法)の未実施と、N95マスクが準備されていないことも多く、罹患しやすい職員が感染する危険性を高めている。 咳や痰がある利用者との接触では、積極的にサージカルマスクを着用して結核の疑いがある利用者を早期に診断することが最も重要な感染対策である。 【疥癬の感染対策】 疥癬の感染対策の問題点として、疥癬の診断の遅れが指摘されている。疥癬の確定診断としてKHO法を行い検鏡し疥癬虫や虫卵を検出するが、その検出率は20~60%と見つかりにくい特徴がある。症状が軽度な場合や二次的な変化が加わった場合は診断が難しくなるため、診断の遅れから施設内での集団発生の要因となっていることが多い。 また、安易なステロイド剤使用による角化型疥癬(ノルウエー疥癬)発生の危険性や、疥癬予防のために日常的にオイラックス軟膏やムトーハップを使用することも問題である。  疥癬の感染対策で重要なことは、利用者の皮膚の観察を十分行うと共に、特に入浴介助時における接触感染対策を強化することが必要である。 【まとめ】 今日まで行ってきて問題ないから、お金がかかるから、管理者の理解が得られない、などという施設内の体制を改善して、感染対策の正しい知識を習得し実践することが必要である。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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