日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop-1
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ワークショップ-1
看護師の立場で手術室や病室における多剤耐性菌対策を考える
久保田  妙子菊池 充浦田 輝夫小磯 雄一高野 康二斉藤 幸江太田 正康
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抄録

【はじめに】多剤耐性菌感染が原因とされる院内感染死亡者発生の報道により、厚労省から医療機関における多剤耐性菌に対して感染防止対策の周知徹底と強化が求められている。当院感染対策委員会も、院内の環境調査、微生物の動向調査、抗菌薬の適正使用状況調査と抗菌薬の使用届出管理、院内感染発症の届出、人工呼吸器関連感染・医療器具留置関連感染サーベランスを主な活動として積極的に感染予防に取り組んでいる。感染対策委員会とリンクする看護部の感染チーム委員会も病棟での日常的処置やケアの中で、手指衛生を含めた標準予防策遵守と耐性菌保菌者に対する感染経路別予防対策を強化しており、2005年4月から感染専任看護師が配置された。今回、他部門との連携を図りながら院内感染防止対策の啓発活動の中で、当院での多剤耐性菌対策の実際と感染専任看護師の役割を通しての感染防止対策の実際を報告する 【事例】、 1:人工呼吸器装着に関連したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がA病棟で3名検出  介入:スタッフの接触予防対策の実践強化と環境整備の徹底を図り、原因追及をおこなった 結果:呼吸器操作パネルに患者と同様のMRSAが検出された。操作パネルの清掃整備の見直しと管理を行ったところ、人工呼吸器装着に関連したMRSA感染が減少した 2:B病棟、入退院を繰り返す患者の喀痰検査から多剤耐性緑膿菌(MDRP)が検出される  介入:MDRPについての情報提供を行い、徹底した個室隔離と接触防止対策の指導、家族への指導と協力依頼、B病棟巡視を頻回に実施 結果:アウトブレイクは防止でき、新たなMDRP院内感染者はでていない 3:外科病棟患者の胆汁培養からPseudomonas putida検出 MDRPの可能性が高い  介入:MDRPについての可能性の情報を伝達し注意を呼びかけ、伝播防止対策を実施 結果:再培養検査提出した結果、問題となる菌の検出は通過菌と思われた 【考察】週に1回、提出される検査細菌室からの情報を基に病棟を巡視して、入院患者の感染状況を確認しているが、耐性菌が同病棟で同時期に検出されると、医師・看護師によるものと考えがちだが、呼吸器操作パネルを介してのMRSA感染が起因となった事から医療器材関連の感染伝播について注意を喚起するきっかけになった。MDRP感染は、易感染者の多い呼吸器・神経内科病棟で起こったが患者・家族を含めた徹底した接触感染予防策を図ったことで院内から新たな感染発症を防止できた。胆汁などの検体採取時は、無菌的採取が行わないと検体を汚染してしまう可能性があるため検体採取や取り扱いの教育は必要である。アウトブレイクと思われる場合や耐性菌が検出された場合は直接、感染対策委員会医師と感染専任看護師に連絡が入り、早期の段階から状況調査と感染防止対策にむけ現場訪問を行い対策を開始するが、平時でも各現場ではリンクナースを中心に感染対策が積極的に実践される体制が確立されるようになってきている。 【結語】感染専任看護師が窓口となることで各部門の担当者と情報共有が円滑となり、実践する現場との連携が図られ耐性菌の蔓延を防止できている。サーベランスにおける情報をフィードバックし対策を実践することで感染の拡大防止に役立っている

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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