日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B06
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当院外来看護師の手洗いコンプライアンスの向上をめざして
近藤 陽子
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抄録

[はじめに]当院外来処置室は中央化されており、全科の静脈・筋肉注射、採血、検査説明、各種処置が集中し、外来において最も手洗いを必要とする場である。しかし、当院処置室の手洗い状況の観察をしたところ、実施されていないのが現状であった。院内感染防止と手洗いの重要性は広く認識され、CDCガイドラインも作成されている。藤井1)は「医療従事者で手洗いの重要性を知らない人はいないはずなのに、世界的傾向として手洗いのコンプライアンスは低い」と述べている。手洗いは、感染防止の為の重要な要素であることを認識すると共に、手洗いのコンプライアンスを阻害する要因を探るため、アンケート調査を実施し分析したのでここに報告する。 [方法]当院外来看護師30名を対象                      1.手洗いについてのアンケート調査 2.デイルの学習ピラミッドとアンケート結 果を基に勉強会 3.勉強会後のアンケート調査 [結果・考察]手洗いの必要性はアンケートに 答えた全員が理解していると答えているのに、勉強会前後での手洗いの回数は2回から5回が一番多く、増えていない。手洗い方法も明らかな手指の汚染がない時は、アルコールが菌を減少させるなどの理由から、現在の手洗い方法の第一選択は、「速乾性手指消毒剤」であると勉強会のなかで強調した。しかし勉強会後のアンケートの結果も「石鹸+流水」が「速乾性手指消毒剤」を大きく上まわっている。このことは、目に見える汚染のあった時のみに手洗いをする為ではないかと考えられる。デイルの学習ピラミッドによると、人間の記憶できる割合は、読む-10%, 聞く-20% ,見る-30%,デモンストレーション-50%、グループワーク-70%、実際に他人に教える-90%、と示している。そこで私達はグループワークまでを勉強会に取り入れ、そのグループワークの結果出された意見を参考に、処置台の上に手洗いの標語をプレートにして表示してみた。アンケートの結果そのプレートにより意識が高まった、と感じた看護師は25名中15名で60%だった。その中でも、業務が多忙であっても目に留まるので、意識して手洗いできると答えた人もいたし、感染防止の為に手洗いを実施していると答えた人が25名中13名で52%であった。しかし先に述べたように手洗いの勉強会後でも、手洗いの回数は増えていない。  私達は今回、外来看護師に勉強会を行うことにより手洗いへの意識の変化がもたらされ、中央処置室での速乾性手指消毒剤の使用が1処置の一連の流れの中に組み込まれ、回数が増えると予想していた。しかし実際に手洗いの回数が増えていないということは、手洗いの必要性は理解していても行動に反映されていないと言う事だと考えられる。今回のアンケートの結果とグループワークから、感染委員の実施している手洗いトレーニングの実施率は低い。看護師1人に対する患者数の増加は手洗いコンプライアンスを下げる。ミーティング時の声がけや勉強会の開催回数をもっと考慮し、繰り返しの教育の必要性を強く感じた。今後感染委員の基本的考えに沿って啓蒙活動の継続に取り組んで、私たち看護師が感染源にならないよう1処置1手洗いの徹底につとめていきたいと思う。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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