日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B07
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一般演題
麻酔科マンパワー強化のために
八田 誠田渕 昭彦加納 正也竹内 直子水野 光規守屋 佳恵
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抄録

麻酔科医の不足は産科、小児科などと並んで深刻な問題となっています。しかし、他科と異なるところは麻酔科の絶対数は増えているのに需要に追いつかないという点です。
近年麻酔事故の深刻さや、市民の医療に対する関心や知識が高まっていること、病院機能評価受審の広がり、麻酔科業務の拡大など様々な要因が重なっていることなどが需要の増大に影響していると思われます。しかし、麻酔科を目指す人たちも増加しているにもかかわらず、需要の増加率には追いつけず、仕事量は増大し、多くの麻酔科医は疲弊してしまい、ついには離脱してしまう人も出ています。
業務量の過大については、麻酔科に限らず、勤務医全体に生じている問題です。そして、それらの解決策のひとつとして医師の集約化が提示されています。しかし、大病院への集約化は中小病院の医師不足を招き、このための業務量、当直日数の増加が勤務医離脱の悪循環を生んでいます。そして、これらの病院では麻酔科医の不在が各診療科の負担をさらに助長していると思われます。
安城更生病院麻酔科においても新研修医制度の影響を受け7名の常勤医が、2004年から2005年にかけ1年足らずのうちに4名に減少してしまいました。これを機会に、医局からの供給のみに頼らず、研修医の中から麻酔科を志望する人たちを募ろうと考えました。そして、2007年5月現在、10名の大所帯となりました。このことは若干の努力と、多くの幸運がもたらした結果であると思われます。これらの要因について考察し、今後の問題点や不安を分析し、将来に備える方策を考えてみます。
まず、われわれは研修医の指導に力を入れることにしました。指導を補助してくれそうな教育的資材は積極的に購入し、麻酔科学に興味を持つよう誘導しました。見学に来る医学生には技術的な指導が行き届かない面もありますが、これらの資材によって多少補っていたかもしれません。当科専攻を志望するものの中にはその理由として見学時の印象をあげていました。
幸運な要因の一つに、若手常勤医師たちにより、麻酔科医の常駐する医員室が常に明るい雰囲気に包まれていることがあります。研修医だけでなく、他科の若手医師も麻酔科医員室に集まってきます。
新しい研修医制度によって非常に厳しい状況を体験させられましたが、今になってみると全員が比較的長期間、麻酔科をローテートすることが幸いしていると考えられます。しかし一方では大学での研修医不足が問題となっています。
現在当院の麻酔科の現状は比較的恵まれていると自覚しておりますが、大学や周辺施設の状況によっては急転することも懸念されます。当院のみの対策としてではなく長期的展望をもって、マンパワー確保を考えていきたいと思います。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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