日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop4-3
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ワークショップ4
致死性心室性不整脈治療の最前線 -アブレーションを基軸としたハイブリッド治療の現状-
野上 昭彦
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抄録

〈緒言〉 カテーテルアブレーションによって多くの上室性頻拍は根治されるようになり,現在では治療の第一選択にもなっている。しかし,器質的心疾患に伴った心室頻拍(VT)におけるカテーテルアブレーションの成功率はけっして高いものではなく,また心室細動(VF)に至ってはその機序が完全には解明されていないこともあって,そのアブレーションには課題が多かった。埋込型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator; ICD)の出現でVT/VFの予後は著明に改善した。しかしVT/VFはいったん生じるとelectrical stormの状態に陥ることもあり,またQOLの観点からも,VT/VF発生を抑制する治療が必要である。近年,VTやVFに対する新たなカテーテルアブレーション手法が開発されてきている。
〈瘢痕組織を旋回するVT〉 器質的心疾患に伴うVTは8の字型マクロリエントリーとよばれる回路をその機序とすることがほとんどである。その際,心室内の瘢痕組織間,瘢痕領域内,あるいは瘢痕組織と房室弁輪間の残存障害心筋が緩徐伝導峡部位となり,回路の共通路となっている。血行動態が安定しているならばVT中にマッピングを行い,その回路を同定することも不可能ではないが,器質的心疾患に伴ったVTでは血行動態が不安定なことが多く,またVT回路も単一ではないことが多いため,そのような方法には限界がある。近年,Electroanatomical mappingによるsubstrate mapping法が開発された。この方法は洞調律時に心室内をマッピングし,低電位領域部位および伝導遅延部位を同時に同定し,VT回路の共通路となりうる峡部を順次焼灼してゆく手法である。Hsiaらはvoltage mapにおいて表示スケールを変更することによりVT回路峡部を明らかにする方法を報告した。またOzaらはvoltage map上の瘢痕部周辺を詳細にペースマップすることにより標的とすべきVT exitが明らかになるとした。一方,Bogunらは洞調律時にQRS後方に遅れて記録される孤立性遅延電位(isolated delayed potential; IDP)が回路の同定に重要であるとしている。
〈心外膜アプローチ〉 心内膜側からのmappingやアブレーションで解決されないVTに対して,心外膜アプローチ法が考案された。従来の心臓マッピング法は経血管的に心腔内をマッピングするものであったが,心内膜側には頻拍の機序となる部位が存在しなかったり,心内膜側からアブレーションを行っても無効であったりした症例では心外膜側に標的とすべきVT基質が存在することが多いことがわかってきた。
〈心室細動に対するアブレーション〉 近年,特発性VFのトリガーとなる心室性期外収縮(VPC)が注目されてきている。Haissaguerreらは特発性VFの起こり始めに認められる多形性VTの起源が左室あるいは右室の末梢Purkinje組織であり,その部位に対するカテーテルアブレーションでVFが抑制可能なことを報告した。また虚血性心疾患における反復性VFにおいてもカテーテルアブレーションの有効性が報告されている。心虚血治療にてもコントロール不能な反復性VFに対する電気的bail-outに緊急カテーテルアブレーションはきわめて有効である。アブレーションによるVF根治の可能性はVF治療にとって大きな進歩であった。しかし,その慢性効果に関しては未だ不明で,予後の観点から未だICDのバックアップは必須であると考えられる。
〈まとめ〉 様々なアブレーション手法の出現によって難治性VTやVFに対する治療に大きな突破口が開かれた。致死性心室性不整脈治療においては決してひとつの治療法に固執することなく,アブレーション,ICD,抗不整脈薬治療のすべてを組み合わすことが重要である。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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