日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop5-1
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ワークショップ5
佐久総合病院におけるDPC導入の経験
西澤 延宏
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キーワード: DPC, 標準化, 診療情報管理
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抄録

佐久総合病院は、平成18年4月にDPC対象病院となった。DPCは、医療の質の向上を第一義として導入したが、この2年間の成果と問題点について考察する。
DPCを導入するに当たり、まず、一番のポイントは、診療情報管理体制の強化にある。適切なDPCを決定し、それに基づいて診療報酬を請求することになるが、DPCを決定すべき医師たちが、必ずしもDPCに精通していない上に多忙なので、正確なDPCの決定を期待することは難しい。そのために診療情報管理課と医事課を同一フロアとして連携を強化し、医師のDPC決定の補完体制を構築した。これは正確なデータを得て、適切な診療報酬を請求する上でも極めて重要なことであり、ここで得られたデータを元に様々な面での分析やベンチマーキングを行うことができた。
第二のポイントとしては、標準化の推進である。特にクリニカルパスの充実には重点を置き、クリニカルパス専任師長を配置し、パスの作成・見直しを精力的に行った。また、日帰り手術センターに併設する形で術前検査センターを設置し、術前検査を可能な範囲で外来で行うと共に説明の標準化を行った。また、平成17年度より、地域医療連携室に専任師長を配置し、後方連携を中心に活動し、地域連携パスも発展していった。
第三のポイントとしてのコスト削減である。特に医療の質を担保した上での医薬品費の削減が必要であり、十分な準備をした上での後発医薬品の導入や血液製剤の使用方法の見直しなどを行った。
以上のような従業員全体としての取り組みを行った中で、平成19年度より7:1看護体制加算を算定できたこともあり、DPC導入は経営的に大きくプラスに働いた。また、DPC導入により、当初目指したように標準化が徐々に進み、医療の質が向上する傾向にある。
しかしながら、問題点もいくつか認められる。データの作成・新しい診療報酬体系への対応など事務職員にかかる負荷は大きくなり、増員や院内体制の見直しが必要となった。また、システムの導入や院内の施設整備などにもかなりのコストが必要となった。一方、DPC制度の欠陥による減収も看過できない問題である。多発外傷や癌の化学療法などではマイナスになりやすく、ターミナル期にある患者において、麻薬や症状を緩和する薬を使用することでも大きなマイナスになることもある。特に超短期の入院でマイナスになるのは大きな問題であろう。
データに基づいた改善を行ううえで、医師の協力は欠かせないが、当院では、分析ソフトを全医師にオープンとして自主的な改善を促してきた。全体としては協力的であるが、問題のある部門もある。そういった部門の担当医師は多忙すぎて診療スタイルの変化を行う余裕がない場合が少なくない。その場合、管理側からの適切なアプローチや介入を行うことが必要である。
DPCは医療の「ものさし」としてベンチマーキングできることが最も大きな利点であり、今後、様々な病院とベンチマーキングできる体制を構築していきたい。現在、長野県厚生連病院全体としての体制整備を検討している。DPC環境下では、農村地域は標準化しにくい患者さんが多いことや高齢者が多いことなど都市に比べて経営的に不利なので、今後、より一層の努力をしたいと考えている。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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