日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J283
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一般講演
回腸腸間膜欠損症による絞扼性腸閉塞の二例
北瀬 悠磨坂本 昌彦城所 博之久保田 哲夫加藤 有一宮島 雄二小川 昭正久野 邦義棚野 晃秀堀澤 稔
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抄録

1例目は2ヵ月男児。朝から嘔吐と哺乳不良が出現し、近隣の総合病院を受診。胃腸炎及び脱水症の診断で入院治療を開始したが所見改善せず。入院当日深夜に緑色嘔吐と意識障害、痙攣を認めたため当院紹介入院となった。診察上腹部膨満あり、レントゲンでは局所的に拡張した腸管を認めたが、他疾患と比べ特徴的な画像所見であった。超音波検査では腹水を認めた。血液検査ではHb 5.8g/dlの高度貧血と126mEq/Lの低Na血症あり、腹部造影CTでは腸管の拡張および腸管内容物の沈殿を認めた。絞扼性イレウスと判断し緊急手術を施行した。回盲部から約80cmでの腸間膜欠損と欠損部への回腸嵌頓・捻転による腸管壊死を認めた。同部の絞扼腸管切除を施行した。術後経過良好にて術後14日目に退院となった。
2例目は1カ月男児。朝から突然の嘔吐、活気不良あり当院を受診した。血液検査を施行したところHb 7.5g/dlと貧血を認め、腹部レントゲンでは1例目と同様にやや特徴的な腸管拡張所見を認めた。超音波検査では腸管拡張所見以外特記すべき所見を認めず、上部消化管造影検査では中腸軸捻転は否定的であった。全身状態不良で絞扼性イレウスによるプレショックの可能性を考慮し緊急手術を施行した。開腹したところ回盲部から110cmでの腸間膜部分欠損と同部への小腸嵌入、絞扼を認めた。同疾患による絞扼イレウスと診断し、同部切除を施行した。術後経過は順調で術後13日目に退院となった。
内ヘルニアはイレウス全体の0.01~5%で、そのうち腸間膜裂孔ヘルニアは50%である。小児が約1/3で、多くは1歳未満の発症である。男女差はないが、発症年齢が若いほど診断が遅れて重症化しやすく、多くは腸管切除を要する。本症例も2例とも比較的早期に手術に踏み切ることができたが、いずれも腸管切除を要した。当疾患は頻度は少ないながらも緊急を要する疾患であり、小児では死亡例も報告されている。一方で最近の画像診断の進歩にもかかわらず特徴的な所見に乏しく、急性の経過をたどることから依然として術前診断が困難とされている。急速に増悪する急性腹症では本症を念頭に置いた迅速な対応が必要であり、今回若干の文献的考察を加えて報告する。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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