日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
セッションID: P1-A109
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寝たきり患者の排便コントロールの検討
~ココアの効果~
高木 ひろ美湯本 恵美
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抄録
〈はじめに〉脳神経疾患における寝たきり患者の多くは,
意志表示ができず,随意的な排便が困難である。今回,食
物繊維が含まれるココアを寝たきり患者に対して使用する
ことで,排便コントロールに効果があるかを検討したので
ここに報告する。

〈研究方法〉
1.対象者:脳神経疾患患者及び,寝たきりで経管栄養を
施行中の患者,7名。
2.研究期間:平成20年7月14日~10月29日
3.方法:純ココア20g(食物繊維含有量4.78g/日)を
湯50cc で溶いたものを2週間眠前に注入する。ココア
注入前2週間と注入後2週間のデータを比較する。

〈結果及び考察〉ココア注入施行後,患者の排便回数の増
加,排便間隔の短縮,下剤使用頻度の減少,処置(摘便・
浣腸)回数の減少という結果が出た。これはココアの注入
によって,腸管の蠕動運動亢進,食物の腸内滞留時間の短
縮及び,腸管内水分保持,ポリフェノールによる抗酸化作
用などが働きかけたと考える。ココア注入後,患者の便の
性状はコロコロ便~硬便が減り,普通便~軟便・泥状便~
水様便が多くみられる傾向にあった。しかし,寝たきり患
者の多くは努責する力がなく,まとまった量の便を出すこ
とが困難な状況であり,便が柔らかくなりすぎることで少
量ずつの排便となってしまったケースもあった。患者の年
齢,体重,疾患なども様々であり,また精神状態,環境と
いった生活そのものによって左右されやすいと思われる。
今後の課題としては患者の状態に合わせたココアの注入量
や投与間隔の調整が必要になる。今回の研究で,寝たきり
者の排便状況を把握することができ,ココアを使った排便
コントロールにより患者の負担軽減につながったのではな
いかと考える。

〈結論〉
1.寝たきり患者にとってのココアの注入は排便コント
ロールに役立つ一方法であった。
2.患者の状態に応じてココア注入量を検討していく。
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© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
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