<はじめに>糖尿病は、医学的管理に加え患者自身による主体的な取り組みが必要とされ、生涯にわたり継続したセルフコントロールが望まれる。農業従事者は会社員と違い季節によって活動量に差があるため、特にインスリン療法に依存している患者の血糖コントロールは難しいが、当院の療養支援外来で20年来 HbA1c10%台だった患者が、約1年後、6.8%まで改善した症例を経験した。患者を単に糖尿病患者というだけではなく、生活者として捉え全人的に支援する事が療養支援では重要であるという事を再認識した事例を報告する。
<療養支援の実際>
_I_.糖尿病患者としての問題点
患者は60歳代男性、罹病歴20年の1型糖尿病であった。発症以来、低血糖発作で緊急搬送と高血糖を繰り返し、インスリンは増量傾向。医師は、原因を自己流の食事療法と飲酒によるものと判断し、禁酒の指導と栄養指導の目的で療養支援の依頼をうけた。
_II_.生活上の問題点
自己管理の背景を聴取すると、農繁期に起こす低血糖を防ぐための過食や間食を行う事で高血糖となっている事が明らかになった。農業面積は2丁5反部(250R=25,000_m2_)と広範囲であり、活動量の不安定な農繁期に低血糖を頻繁に起こしている事が分かった。
_III_.医師と認定看護師との連携の重要性
医師にコントロール不良の真の要因をフィードバックし、インスリン量の減量を提案した。その後、療養支援を継続し、コントロールは改善した。患者なりの療養行動を尊重しつつ、個人の生活に沿いながら専門的なアドバイスをしていく事は重要であり、医師と専門的知識を習得した看護師による連携は重要である。
<まとめ>糖尿病の治療の成否は、患者自身の理解と生活の中で常に血糖をコントロールできることにある。医学的側面と、生活者としての側面も重要視した全人的な支援をするためには医師と糖尿病看護認定看護師がリーダーシップをとり、他職者とも情報を共有化し、患者をサポートする事が必要である。