日本農村医学会学術総会抄録集
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第59回日本農村医学会学術総会
セッションID: R-16
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糖尿病性動眼神経麻痺の1例
櫻井 綾子大河内 昌弘山本 陽一加地 謙太田村 泰弘浅田 馨服部 孝平後藤 章友神谷 泰隆大野 恒夫
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抄録

症例は、70才男性。20年前より、糖尿病(2型)、高血圧、胃潰瘍を指摘され、内服治療を継続され、glimepiride 2mg、pioglitazone 15mg, Voglibose0.9mg最近1年のHbA1cは、6.1~6.8%で推移していた。H21年6/14に、急に、複視を認めるようになり、救急外来を受診された。来院時、意識清明で、瞳孔・対光反射に異常なく、右方視による複視(右眼内転障害)を認めた(pupillary sparing)。眼瞼下垂、舌偏位、顔面神経麻痺、四肢の麻痺は全て認めず、Barre sig、Finger-nose testに異常を認めなかった。頭部CT&MRI&MRAでは、lacunar infarctionを認めるのみで、内頸動脈・後交通動脈分岐郡脳動脈瘤や海綿静脈洞血栓症は認めなかった。加えて、両下肢の感覚神経障害を認め、アキレス腱、膝蓋腱反射の低下を認めた。眼科的にも眼球運動異常を認めるのみで、眼底異常、視野異常は認めなかった。以上より、脳の器質的な疾患による動眼神経麻痺は考えにくく、糖尿病性動眼神経麻痺と診断した。治療としては、リハビリ治療に加え、血糖コントロールの強化、血小板凝集抑制薬、血管拡張薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12製剤を併用したところ、1ヶ月程度で右眼内転障害および、複視は消失し、以後症状の再発は認めなかった。糖尿病性合併症としての動眼神経、外転神経麻痺は比較的まれな疾患であるため、脳梗塞の一症状と間違われやすいと考えられる。しかし、急性発症し、高齢者に多く、糖尿病の罹病期間・コントロール状態・眼底所見とは無関係に発症すること、一側の動眼神経、外転神経麻痺が多く、 瞳孔機能は保たれる(pupillary sparing)特徴的な所見から、比較的鑑別は容易であること、加えて、多くは数か月以内に回復する予後の良さから、その疾患を知ることは、疾患の迅速な鑑別・治療および患者指導に役立つと考えられ、典型的な自験例をここに報告する。

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© 2010 一般社団法人 日本農村医学会
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