日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1D-20
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消化器癌終末期における人工肛門造設術の有用性
谷岡 利朗高橋 昌宏渡会 博志山上 英樹川村 秀樹秦 庸壮益子 博幸石津 寛之岡田 邦明安達 武彦
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キーワード: 終末期, 外科治療, QOL
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抄録

<はじめに>根治切除が不可能であっても、患者のQOL改善を目的に外科治療が行われる事がある。消化器癌術後の腹膜播種によって腸閉塞を生じた3症例に対して、QOLの改善を目的に人工肛門造設術を施行した。<症例1>62歳、女性。横行結腸癌に対して2007年7月に結腸右半切除術を施行し、術後病理はpSI(大網), pN1, cM0, pStage IIIaであった。術後補助化学療法を行うも2008年5月に卵巣転移を認め、6月に子宮両付属器切除術を施行した。その後も化学療法を続けるが腹膜播種が増悪し、2010年10月に直腸狭窄に伴う腸閉塞を発症したため、11月に横行結腸人工肛門造設術を施行した。術後より経口摂取を開始し、術後31日目に退院とした。術後約6ヶ月が経過し、生存中である。<症例2>59歳女性。胃癌に対して2008年3月に幽門側胃切除術を施し、術後病理はpT4(腹壁), pN1, pP1, CY1, cM0, pStage IVであった。術後より化学療法を行うも腹膜播種が増悪し、2010年11月に横行結腸狭窄に伴う腸閉塞を発症したため、12月に回腸人工肛門造設術を施行した。術後より経口摂取を開始し、術後26日目に退院とした。術後約5ヶ月が経過し、生存中である。<症例3>64歳、女性。胃癌に対して2010年5月に胃全摘術を施行し、術後病理はpT4a, pN3, pM1(腹膜), CY1, pStage IVであった。術後より化学療法を行うも腹膜播種が増悪し、2011年2月に横行結腸狭窄と直腸狭窄に伴う腸閉塞を発症したため、3月に回腸人工肛門造設術を施行した。術後より経口摂取を開始し、術後23日目に退院とした。術後約2ヶ月が経過し、生存中である。<考察>3症例とも術後は順調に経口摂取可能となり、自宅での生活が可能となった。術後1ヶ月の血清アルブミン値は術前より改善していた。全身状態が許せば、消化器癌の終末期における人工肛門造設術も緩和医療の選択肢の1つとなり得ると考える。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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