日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: S2-2
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農村の食習慣と生活習慣病
*山崎 雅之濱野 強塩飽 邦憲
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抄録

〈緒言〉生活習慣の変化に伴い2型糖尿病が増加しつつあり,予防・管理対策の確立が急務となっている。肥満や糖尿病増加の主要な原因は,身体活動不足と過食,肥満やインスリン抵抗性を促進する単純糖質の過剰摂取と考えられる。広い中山間地域を抱える島根県でも,豊かな自然や食,住環境に恵まれているが,貧弱な公共交通網により自家用車利用が多く,大都市と比べて,身体活動量が低いために,約10年の遅れで肥満や糖尿病が増加しつつある。また,島根県内でも食環境が異なり,生活習慣病の地域差は大きい。そのため島根大学では,疾病予知予防研究拠点を設置し,地域住民の協力を得て県内での生活習慣病の予知予防を主眼においた多目的コホート研究(Shimane study)を展開しつつある。
〈ベースライン調査〉2006年~2010年に,雲南市,出雲市佐田町,邑智郡邑南町,隠岐郡隠岐の島町で特定健診時に,40歳以上の3,840人(男性1,649,女性2,191人)から研究承諾を得て,ベースライン時の生活習慣と健康状態を比較した。
〈食習慣〉塩分摂取など定量的な食習慣情報は収集中であるが,雲南市,佐田町,邑南町は中山間地域に,隠岐の島町は離島に属している。このため,隠岐の島町では魚が多食され,邑南町(広島市に隣接),佐田町(出雲市中心部まで20分),雲南市の順に魚や肉の摂取が少なく,野菜の摂取が多くなっている。減塩モニターを用いた1日推定塩分摂取量は,隠岐の島町が邑南町より約1g 少なかった。
〈肥満〉男性のBMI25以上(肥満1度以上)は全国40歳以上30%(平成20年度国民栄養調査)に対して,中山間地域で20~21%と低く,隠岐の島町が29%であった。女性のBMI25以上は,全国26%に対し,中山間地域で19~21%と低く,隠岐の島町で30%と高かった。全国平均と比較して,中山間地域では,男女とも肥満は少なかったが,隠岐の島町は魚の多食,男性での多量飲酒があり,肥満が多かった。
〈高血圧症,脂質異常症〉高血圧症治療者は,全国の男性33%に対して,中山間地域では19~31%と若干低く,隠岐の島町では54%と高かった。女性でも全国30%に対して隠岐の島町が43%と高かった。女性の脂質異常症でも,隠岐の島町で治療者割合(34%)が高かった。
〈糖尿病〉HbA1c6.1%以上(JDS 値)の割合では,40歳以上男性の全国平均が14%で,中山間地域が9~11%であるのに対し,隠岐の島町で20%と高かった。さらに,治療中患者を加えると,中山間地域で11~14%に対して,隠岐の島町は25%ときわめて高率であった。しかし,合併症の多くなるHbA1c7.1%以上の割合は,中山間地域21~29%に対し,隠岐の島町では0%であった。
〈まとめ〉過食は,農村でも肥満や糖尿病の多さに影響していたが,隠岐の島町の疾病管理状況は最も良好であり,医療費は県下で最も低い。農村地域での生活習慣病の予防や管理には生活習慣の改善とともに,疾病管理の強化も重要である。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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