日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1F-5
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小脳性運動失調患者に対する体重免荷トレッドミル歩行練習の効果
肥田野 義道加藤 かおり遠藤 博山本 泰三
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抄録

【はじめに】小脳性運動失調患者の歩行は、バランスを崩さないようにするため身体を固めやすい。体重免荷トレッドミル歩行練習は、主に脳卒中片麻痺患者に実施されており、歩行速度や左右対称性の改善、下肢筋活動に影響を及ぼすとされている。しかし失調症の患者を対象とした報告は少ない。そこで慢性期の小脳性運動失調患者に対して、体重免荷トレッドミル歩行を実施した効果を検証した。
【理学療法評価】関節可動域、筋力に制限はなく、体幹・四肢に運動失調があり、歩行中の会話や視線を変えさせると、ふらつきや歩行速度の低下が見られた。10m歩行は(2010年7月)33歩・16.1秒で、歩容は頚部・体幹・四肢を固定しながらワイドベースであった。
【方法】トレッドミルの上方にスリングエクササイズセラピーを設置し、歩幅の均等化と踵接地、頚部や視線を自在に変えられる状況を作り出せるだけの免荷と速度調整を行った。分析は2010年7月~10月の間に、一事例の実験デザインであるABABデザイン(A:7月と9月、トレッドミル歩行非実施、B:8月と10月、トレッドミル歩行実施)で練習を行い、10m歩行秒数、歩数を一元配置分散分析の後、post hoc testを行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】10m歩行の秒数と歩数の平均は初回Aで17.2秒、34歩、初回Bで15.5秒、30歩、2回目Aで15.1秒、29歩、2回目Bで13.6秒、27歩であった。秒数、歩数ともに主効果があり、体重免荷トレッドミル歩行練習により、10m歩行の秒数、歩数が減少した。
【考察】10m歩行の秒数と歩数が減少したので、歩行率の増加ではなく、歩幅が増大したといえる。体重免荷により全身の筋活動が効率化し、身体を固めず大胆に下肢が振り出せたと考える。体重免荷トレッドミル歩行練習は、慢性期失調症に対しても難易度を調整しやすく神経筋再教育ができたと考える。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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