日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1G-8
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当院におけるアルブミン製剤基準外投与の現状とその傾向
五十嵐 健一櫻井 良子澤田 恵美子奥野 哲男
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抄録

〈緒言〉
輸血用血液製剤の適正使用は安全な輸血療法を実施する上で非常に重要である。当院では2006年4月より輸血管理料を取得し血液製剤の適正使用に努めているが基準外での投与も少なくない。そこで輸血療法委員会はアルブミン製剤を基準外使用した医師に対し投与の妥当性を問う『輸血効果判定報告書』の提出を求める取り組みを開始した。今回、この報告書を基にアルブミン製剤基準外投与の現状と問題点を検討したので報告する。
〈方法〉
2009年4月~2011年2月までの23ヶ月間に回収された『輸血効果判定報告書』47例について使用状況、使用目的、妥当性評価などの傾向を検討した。
〈結果〉
診療科内訳は外科38例、内科7例、脳外科2例であった。使用状況は外科の消化器癌術後が33例と多数を占めた。担当医師による妥当性評価は妥当27例、妥当でない20例と妥当優位であったが、委員会の評価は妥当17例、妥当でない30例と逆転していた。外科の投与理由は、医師・委員会共に妥当と判断したものは術後合併症などによる全身状態の不良が多く、医師・委員会共妥当でないと判断したものは術後の単なる循環血漿量維持目的が多かった。内科の難治性腹水治療に対する投与では6例全てで医師は妥当と判断したが、委員会は肝腫瘍破裂の危険があったものや腹水穿刺に伴う投与以外は妥当でないと判断した。
〈考察〉
今回の検討で外科医には侵襲の大きな手術の際、合併症を危惧し栄養状態を改善する目的で投与する傾向が認められた。単に血清アルブミン値を維持することが栄養状態改善には繋がらないことを強く訴える必要性を感じた。肝硬変などの難治性腹水に対する内科的治療では利尿剤抵抗性の場合に安易に使用される傾向があり、大量腹水穿刺に伴う投与以外は原則として認めない姿勢を示すべきと思われた。
〈結語〉
輸血療法委員会が医師に対し使用指針に基づく明確な基準を提示・啓発し続けることが適正使用に繋がるものと考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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