日本農村医学会学術総会抄録集
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ISSN-L : 1880-1730
第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2B-20
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医療メディエーター2年間の活動から見えてきた課題
中谷 明子石木 英樹松波 登志子平野 清谷口 直樹田中 孜
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キーワード: 医療メディエーター
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抄録

(背景)本院は第三次救命救急センターを擁する383床の急性期型病院である。近年、権利意識の高揚から医療者に対する苦情や、時として暴言・暴力が目立ちその対応に苦慮していた。そこで患者サービス向上を目指し平成21年4月から医療相談室に医療メディエーターを専従で配置した。(実態)対応事例数1年目102件、2年目126件。関連者間の面談介入事例は83件。面談回数は平均2回、時間は1回につき平均1.2時間、最長2.5時間。苦情は_丸1_診断・治療に関すること_丸2_職員接遇に関すること_丸3_看護に関すること。当初の相談者は患者49.1%、家族33.3%、医療者17.6%。面談対象となった職種は医師50.6%、看護師18.1%、その他31.3%。(考察)利用者の不満はいろいろな場面で「理解できない」「不愉快」「納得できない」などが積み重なり、許容できなくなってしまうこと、ゆえに医療者には日常的に患者や家族に真摯に向き合う態度が求められている。一方医療メディエーターは患者側と医療者側を中立的な立場から、両者の理解、関係改善を支援する役割であるが、病院職員を擁護する役割だと思っている職員が少なからずいることがわかった。本院では2年にわたりメディエーション研修を開催し看護師長・主任看護師・MSWが受講した。これにより特に看護部内ではスキルが少しずつ浸透し成果をみている。今後の課題は_丸1_病院幹部が先頭に立ちメディエーションマインドを院内に拡大させること_丸2_医師がスキルを身につけること_丸3_事例に対する迅速で丁寧な対応を病院幹部が支援することである。メディエーターとしては患者と医療者の怒りや争いで見えなくなっているベールの下にある語りえぬものにこそ真実があることを念頭に支援を続けたい。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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