日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2C-5
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当院の小児科領域における溶血性連鎖球菌の重症感染症例
臺 美恵子佐藤 和代小林 千佳遠山 卓明長谷川 誠
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キーワード: 腸腰筋膿瘍
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抄録

<背景>
Streptococcus pyogenes(以下S. pyogenes)による劇症型や重症感染症例が報告されてきたが、
近年、Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis(以下S. dysgalactiae)など、S. pyogenes以外のβ溶血性連鎖球菌での重症感染症例が増加している。
今回、当院の小児科領域にて2症例経験したので報告する。
<症例1>
5歳女児。既往歴、現病歴なし。H21年12月10日発熱、右腰痛、右股関節痛を訴え当院受診。
来院時採血でWBC13900/μl、CRP1.87mg /dl。その後、右腸腰筋膿瘍疑いにて切開、排膿術施行。
術中の膿検体培養にてS. dysgalactiae検出。抗生剤投与継続し、ドレーンによる大量の排膿の末、症状改善し、H22年1月15日退院となった。
<症例2>
2歳男児。既往歴、現病歴なし。H23年5月5日発熱、左股関節痛を訴え近医受診。
採血にてWBC16500/μl、CRP24.76 mg /dlと高値のため当院入院。
咽頭における迅速A群溶連菌検査陽性。血液培養にて、S. pyogenes検出。その後、左腸腰筋膿瘍疑いにて抗生剤投与継続。穿刺した膿検体培養は陰性。H23年5月25日現在治療中。
<考察>
症例1では血液培養は陰性であったが、病巣部の膿検体からはS. dysgalactiaeが検出された。
症例2では血液培養からS. pyogenesが検出されたが、病巣部の膿検体培養は陰性であった。
しかし、両症例ともに腸腰筋に膿瘍が形成されており、股関節痛を伴うため原発病巣の可能性が高い。
<まとめ>
今回の症例のように、原因菌となるβ溶血性連鎖球菌が少数しか検出されないにもかかわらず、基礎疾患がない小児においても侵襲性溶血性連鎖球菌感染症として重症化することがある。
急激に病状が悪化するため、培養検体の量や提出時期が、正確な検査結果を得るために重要である。
また、検査技師が臨床医と患者状態や治療経過、検査結果などの情報を共有することにより、感染病巣や原因菌の早期発見、早期治療が可能となる。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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