日本農村医学会学術総会抄録集
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ISSN-L : 1880-1730
第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2C-14
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秋田県南部前期高齢者女性の介護予防基本チェックリストと骨密度の関連
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抄録

介護予防の推進に向けた対策を講じるべき運動器疾患として,骨粗鬆症に起因する骨折,膝痛及び腰痛があげられる.本研究は,生活機能と骨密度の関連を明らかにすることである.研究対象は,秋田県南部Y市で2007年4月から2010年9月の間に,A病院健診センターで生活機能評価と骨粗鬆症検診(DTX-200を用いたDXA法にて橈骨遠位端の骨密度を測定)を受診した65歳と70歳の女性(以下,「受診者」)である.分析方法は基本チェックリストの25項目の回答について,性別,年齢,骨密度を指標とし,関連をχ2検定,またはt検定を,年齢における骨密度基準値で,基本チェックリストの回答を,また,特定高齢者判定基準を指標とし骨密度の差を比較した.本研究は秋田県農村医学研究所長より承認を得た.受診者に対し,健診データを研究に用いることの趣旨を文書で説明し,同意を得て,データの匿名化,プライバシーの保護に順守し実施した.
研究期間中,生活機能評価と骨粗鬆症検診を同時に行った前期高齢者女性は444人であり,65歳が131人(29.5%),70歳が313人(70.5%)であった.生活機能低下の内訳は,『認知症』が最も多く95人(21.4%),次いで『うつ』48人(10.8%)であった.運動機能が低下している者37人(8.3%)は一般高齢者女性に比べ,『運動』5項目において否定者,すなわち機能低下を示す割合が高く,有意な関連がみられた.特定高齢者の判断基準で『口腔』に該当した10人(2.3%)は一般高齢者に比べ,『運動』2項目,『口腔』3項目において否定者,すなわち機能低下を示す割合が高かった.
本研究は,65歳と70歳の限られた,しかも健康に意欲的に富んだ前期高齢者女性についての検討である.健康に意欲的に富んだ集団であるものの,骨密度や生活機能の関連が明らかになったことは,今後,骨粗鬆症における骨折の予防のための運動.栄養.口腔の機能向上など,介護予防をより推進するための根拠であると考える.骨密度は前期高齢者女性の要介護リスクを判断する一つの指標となることから,骨密度の維持および向上を図る,骨粗鬆症検診の受診率を向上させる必要がある.

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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