日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: WS1-3
会議情報

来たるべき大災害、その時、経管栄養患者に対する液状栄養食の確保をどうするか?
谷田部 淳一田口 文恵石田 泉佐藤 厚子亀田 俊夫上野 修一眞田 寛啓
著者情報
キーワード: 災害, 経管栄養, 褥瘡
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景と目的】2011年3月11日、未曽有の大震災が東日本を襲った。交通路の寸断やガソリン供給の不足により、物理的被害の小さな病院や施設においても、経管栄養患者に対するパッケージ済み液状栄養食の不足をきたした。投与栄養量の一部を減じざるを得なかった実情と、制限栄養が患者に与えた影響について報告し考察する。
【方法】高田厚生病院療養病棟に入院し、すべての栄養を経管投与に依存する46人の患者を対象とした(85.2±8.1歳)。液状栄養食の供給不足に伴い、3月14日から14日間、すべての患者において約40%の栄養制限が施行された(1012±154 to 610±58 kcal)。この緊急対応については同院臨時災害対策会議にて了承され、患者家族から書面による同意を得て施行された。
【結果】震災より1か月後、死亡した対象患者はいなかった。栄養制限による脱水、下痢、貧血を含む健康被害は一切認められなかった。体重は平均1.2 kg減少したが、血液検査にて総蛋白(6.7±0.6 vs 7.1±0.7 g/dl, mean±SD)、アルブミン濃度(3.2±0.4 vs 3.3±0.5 g/dl)の有意な低下は見られなかった。震災前より褥瘡を保有していた12名の患者において、DESIGN-Rにより定量評価された褥瘡の状態に有意な変化は見られなかった(20.5±11.0 vs 19.5±15.7)。
【考察と結論】非常時に備え常に保たれていた7日分の在庫では、必要とされる栄養投与を流通の回復まで継続することができなかった。しかし本結果から、経管栄養を受ける高齢者において、14日間にわたる一定の栄養制限は安全であることが示された。パッケージ済み液状栄養食を置き換えるオプションとしては、糖液やミキサー食などがあり議論の余地がある。災害時における経管栄養患者への対応について、公に定められたガイドラインは存在しない。東日本大震災に伴って発生した様々な経験を科学的に評価し、今後の災害発生に備えるエビデンスを積み上げることが重要である。

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top