症例は36歳男性。4歳時に血友病A(重症型)と診断。平成22年10月8日、トラック運転中の交通事故で右顔面をハンドルで強打した。頭部CTにて頭蓋内に出血性病変は認めなかったものの、顔面腫脹が増大傾向にある事、および遅発性頭蓋内出血の可能性を考え経過観察入院となったが、症状悪化認めず退院となった。11月9日、間欠的な後頸部痛あり当科受診。頭部CTにて左慢性硬膜下血腫が認められた。来院時採血にて、APTT 115.5秒と著明な延長あり、第_VIII_因子製剤投与後、穿頭血腫除去術施行。術後より4日間、第_VIII_因子製剤を投与し、経過は良好であったため、術後7日目に退院した。しかし翌朝より、徐々に悪化する頭痛、歩行困難を自覚した。自宅を出る際はなんとか自力歩行できたが当科受診時にはGCS 8点、両側瞳孔径6.5mmであった。頭部CTにて前回の慢性硬膜下血腫と同部位に急性硬膜下血腫が認められ、同日、第_VIII_因子製剤投与後、開頭血腫除去術を施行した。その後、軽度の高次機能障害および視野障害は残したものの独歩退院となり、現在は外来にて経過観察している。 今回我々は、慢性硬膜下血腫の治療後に急性硬膜下血腫を発症した血友病A患者の症例を経験した。頭蓋内血腫を有する血友病A患者の治療と経過について、若干の文献的考察を交えて報告する。