日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-B-4
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左大腿骨頭周囲骨折を呈した症例の入浴指導経験
江端 梨紗
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抄録

<はじめに>5年前左人工骨頭置換術施行。今回左大腿人工骨頭周囲骨折(Vancoubour type C)を呈した症例を経験した。股・膝関節に関節可動域(ROM)制限をきたし、自宅浴槽の入浴動作困難と予想された。自宅浴槽を想定し作業療法を施行した後、退院前訪問を実施した。
<症例紹介>60歳後半、女性、身長150cm、体重70kg、body mass index(BMI)31.1 受傷前の日常生活活動(ADL)は自立していた。長谷川式簡易知能評価スケール:25/30点、ROM:股関節屈曲50°伸展-10°、膝関節屈曲55°伸展-15°、徒手筋力検査:大腿四頭筋3、病棟でのADL:入浴以外修正自立~完全自立、杖歩行にて退院予定。介護保険:要支援2。
<自宅の浴槽>事前に夫に対して住環境チェックリストを用いて家屋調査を行った。浴槽の高さ・深さ60cm、浴槽内幅80cm、据え置き式、浴槽に対して左側に横手すり設置。目標(1)安全な浴槽移乗、目標(2)浴槽内着座とし評価・訓練を行った。
<入浴指導>(1)に対しては、シャワーチェアと浴槽の高さを同じにする方法、浴槽の高さを軽減する方法を検討。訓練室(高さ40cm、深さ60cm、浴槽内幅118cm,半埋め込み式)では、シャワーチェアを使用することで自立となった。自宅では60cm台のイレクターパイプを組むことを想定し、60cm台を跨ぐ訓練も同時に実施した。(2)に対しては、浴槽台(30cm)を利用することを想定し、30cm台からの起立訓練を実施した。訓練室では(1)(2)ともに可能となった。その後退院前訪問にて環境調整を行った。
<結果・考察>自宅の浴槽では(1)(2)とも達成困難であった。実際の浴槽内幅68cmであり、予想以上に狭い状況であった。狭い浴槽においては、股・膝関節ROM制限により跨ぐことができず、また浴槽台30cmでは着座できなかった。股・膝関節の更なる改善は難しく現状の機能に合わせた環境調整が必要であったが、事前の情報収集が十分ではなく適切な提案を行うことができなかった。詳細かつ適切な家屋調査の重要性を再識するに至った。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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