日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: WS3-3
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異時性・多発性に膿瘍を形成したMSSA敗血症の1例
川島 直樹寺田 浩史高橋 昭彦高田 淳前田 晃男
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抄録

    異時性・多発性に膿瘍を形成したMSSA敗血症の1例  ○川島直樹 寺田浩史 高橋昭彦(JA岐阜厚生連西美濃厚生病院検査科)   高田 淳 前田晃男 (JA岐阜厚生連西美濃厚生病院内科) 【はじめに】化膿性腸腰筋膿瘍や開腹歴のない患者の腹腔内膿瘍は、比較的稀な疾患とされているが、今回我々は、異時性・多発性に腹腔内と腸腰筋に膿瘍を形成したMSSA敗血症の1例を経験したので報告する。<BR> 【症例】腰部脊柱管狭窄症、肛門周囲痛にて外来通院中の74歳女性。<BR> 【経過と所見】2011年1月下旬より発熱と強い全身倦怠感を認め、当院救急外来受診し、入院となる。入院時、両足趾には凍傷を認め、一部は潰瘍化していた。血液検査上は、WBC14,180/μl、CRP25.8mg/dlの強い炎症反応を認めたが、胸部から骨盤CTでは熱源の同定は不明。IPM、CLDM、γグロブリンの投与が開始されたが、連日38.5℃を越える発熱が続いた。入院時の血液培養よりMSSA、足趾潰瘍部の膿からも同菌種を検出し、同部からの血流感染による敗血症と診断され、抗菌薬をCEZ4g/day とCLDM12,000 mg/dayに変更となり、徐々に炎症反応は低下したが、発熱が続き、経過中2度の血液培養でMSSAを検出した。Gaシンチグラムにて、恥骨辺りに集積を認め、CT・エコー検査にて腹腔内膿瘍が確認され、開腹ドレナージが施行された。その後解熱、炎症反応も改善し抗菌薬投与終了となったが、再び発熱ショック状態。血液培養にてMSSAを検出、CT・エコーにて両側多発腸腰筋膿瘍を認め、穿刺ドレナージを施行され、同菌を検出。CEZ4g/day投与され、解熱・CRP陰性化し、エコー上膿瘍腔は消失しCEZ終了となる。10日後に再度発熱、CTにて腸腰筋膿瘍の増大を認め、CEZ投与を再開し5月末に軽快傾向となる。<BR> 【考察】本症例は、MSSA敗血症により、異時性・多発性に膿瘍を形成し、長期間の治療となった。細菌学的検査により同一の菌種が同定され、全て一連の感染症であると考えることができ、また、適性な抗菌薬の選択につながった。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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