日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-C-10
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低栄養と褥瘡を発症した慢性腎不全患者に対してNST介入が有効であった一例
橋本 賢久留宮 康恵中島 里奈中本 加純伊藤 浩一
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抄録

【目的】近年、低栄養状態の改善やこれに伴って発症する褥瘡の治療を目的とした、NST介入のシステムが確立されてきた。しかしながら、介入後の取り組みによっては、再び低栄養となるケースが多く、退院に向けたNST活動の充実が望まれている。今回、褥瘡と低栄養を発症した慢性腎不全患者に対し、当院NSTチームが介入を行い、改善が認められた一例を示す。【症例】91歳女性。熱発、慢性腎不全、食思不振、褥瘡により入院加療。腎機能改善に伴い全粥ミキサー食全量摂取が可能となり、退院となった。3ヵ月後、摂食量低下、褥瘡悪化のため再度入院となりNST依頼となった。再入院時検査データAlb1.7g/dL、BUN69.7mg/dL、Cre2.2mg/dL、TEE1,240kcal。全粥ミキサー主食1/2食、PPN3号1,000mLに合わせて、低Alb血症と褥瘡改善のため高たんぱく質比率流動食200kcalをBUNとCre値を確認しながら投与した。全量摂取が難しくSTによる嚥下評価により、七分粥ミキサー食に変更した結果、ほぼ全量摂取が可能となった。同時にBUNが高値となり、流動食中止が検討されたが、緩やかなAlb値と褥瘡の改善が見られたため継続とした。家族の希望により在宅介護に向けた退院のために、栄養、口腔・褥瘡ケアに関する指導を行い、流動食からエンシュアHへ変更し、腎機能の悪化もなく退院となった。退院後は訪問看護と通院診察で褥瘡は完治し、Albは3.3g/dLに改善した。【考察】本症例は、腎機能低下時の栄養付加と、NST介入による退院時の指導が有効であった一例である。成分栄養管理を必要とする病態における栄養付加は、検査データ評価だけでなく、容態との総合的な判断が重要であることが示唆された。またNST介入後の在宅介護を行う場合は、退院前指導と訪問看護の充実が重要であることが示された。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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