日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J-A-7
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地域移行における障がい者の選択肢の拡大のための農業就労
-農家との連携を通して- 
片山 千栄石田 憲治
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抄録

【背景と目的】病気や障がいの有無に拘らず、住み慣れた地域での自立生活の継続には就労が不可欠であり、就労機会の少ない農村部では農業への期待がある。一方、過疎化高齢化の進行する農村において、農家側からは多様な人材による農業労働力としての能力の発揮と貢献への期待がある。ただし、個別経営農家による障がい者の雇用は双方にとり難しい側面もある。そこで、農家による直接雇用以外の方法で、障がい者が農業就労に継続的に関わり得る形態を検討し、障がい者が地域で働き暮らし続けられるための環境について示唆を得たので報告する。
【方法】障がい者が農業分野で継続的に就労に取り組むモデル事例(※)として、障害福祉サービス事業所と農家との連携、特例子会社と農家との連携をとりあげて検討した。なお、障害の種類を予め特定してはいないが、事例において就労していたのは、主に知的障がい者、精神障がい者であった。
【結果と考察】事例ではいずれも、障がい者はそれぞれ障害福祉サービス事業所や特例子会社に所属し、所属先が農家から農作業の委託を受けて就労している。障がい者からみると、障害福祉サービス事業所など一定の福祉サービスを受けながら就労経験を蓄積したり、障害者雇用促進法に規定する特例子会社に雇用され一定の配慮の元で就労することにより、農業分野に携わることができる。農家からみると人件費負担を少なくしつつ労働力確保ができるなどの利点がある。このように、直接雇用に比べて双方に無理なく継続しやすい形態と考えられた。こうした受け皿の地域への広がりは、農業分野での就労に意向や関心を持つ障がい者や地域移行を進める医療・福祉の関係者からみて就労の場の選択肢の拡大が期待できる。
※農林水産省補助事業「平成22年度障害者就労推進事業」におけるモデル事例(静岡県、島根県)

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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