日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: ED-1
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循環器疾患の再生医療
*湊口 信也
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キーワード: 教育講演
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抄録

 循環器領域における再生医療は,血管再生・心筋再生を実現することにより従来の治療では十分満足の得られないケースの心筋梗塞,心不全,閉塞性動脈硬化症などの心血管系疾患を治療することにある。心血管再生医療に使用される可能性のある細胞ソースとして,胚性幹細胞(ES 細胞),iPS 細胞,体性幹細胞(骨髄細胞,末梢血細胞,骨格筋細胞,脂肪細胞,muse 細胞)などが考えられている。ES 細胞とiPS 細胞については現時点ではまだ動物実験レベルであり臨床応用まではしばらくの時間を要すると考えられている。iPS 細胞については特に大きな期待が寄せられているが,Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Myc の4つの遺伝子を導入し誘導された万能細胞iPS 細胞は,癌遺伝子であるc-Myc を含むがゆえにinvivo の個体に移植されると高率に癌を発生する。この問題を解決するために最近c-Myc の代わりにGlis―1遺伝子を導入することにより誘導されたiPS 細胞では発癌の問題が解決される可能性があるのではないかと期待されている。一方,体性幹細胞を用いる方法は患者本人の細胞を用いるため倫理的問題のハードルが低く,多くの臨床試験が行なわれている。最も一般的に行なわれてきたものは骨髄幹細胞を用いた心筋梗塞後の心筋組織再生医療,閉塞性動脈硬化症の血管再生である。我が国で最も初期の段階に行なわれた臨床試験は,TACT 研究であり,骨髄単核球を採取し,虚血下肢患部に筋注した結果,下肢血流は増加し,自覚症状の改善,歩行距離の増加,下肢酸素分圧の増加などがもたらされたと報告されている。骨髄細胞を用いた心筋梗塞後の組織再生療法は,代表的な方法は患者自身から採取した骨髄幹細胞(骨髄単核球)を冠動脈内に注入することである。この方法による臨床試験は非常に多くなされているが,control があり患者数が多く2年以上観察している報告は5つあり,結果としてこの方法の安全性は確立されたが,心機能改善を指標にした有効性については有効とするものと効果がないとするもので相半ばしている。骨髄細胞を採取するためには全身麻酔という侵襲的な手技を要するため,もっと非侵襲的な方法ということで,G-CSF を用いることにより骨髄から骨髄幹細胞を流血中に動員し,心筋梗塞部位にホーミングさせ,その場で血管,心筋,筋線維芽細胞に分化させるという方法が考えられた。この方法は我々の施設をはじめ多くの施設で動物実験が行なわれ,劇的な心機能の改善,梗塞サイズ縮小がもたらされることが明らかになった。そのため,大きな期待が寄せられ,多くの臨床試験がなされた結果,慢性期の心機能を指標とした場合,効果ありとするもの,効果なしとするもの両方の報告があり,G-CSF の投与量,投与時期などの問題が関与しているのではないかと考えられている。心筋再生療法で国からの支援を受けて現在進行中の臨床試験としては,1)大阪大学の「細胞シートによる多施設臨床研究を目指した基盤システムの構築」,2)京都府立医大の「重症慢性虚血性心不全に対するヒト心臓幹細胞と幹細胞増幅因子bFGF のハイブリッド自家移植療法の検討」の2つである。結果が期待されるところであるが,いずれも外科的なアプローチが必要であるため,内科的で非侵襲的な方法が求められる。我々は,内科的な1つの方法として,ナノテクノロジーを応用することにより,再生サイトカインを選択的に梗塞心筋部位に運搬し,局所の血管再生・組織修復を行なうことができるdrug delivery system(DDS)を開発中であるので紹介する。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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