日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: S1-3
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地域医療を守るための大学病院の使命
*岩間 亨村上 啓雄
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キーワード: シンポジウムI
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抄録

 岐阜大学医学部附属病院は岐阜県において唯一の特定機能病院・医学部附属病院であり,本院の使命は高度な先進医療を実践し開発することと医師を初めとする医療人を育成することにあると考えている。
 岐阜県には5つの医療圏があり,各医療圏には中核となる中~大規模病院が存在する。それぞれの中核病院が地域の小規模病院や診療所と連携をとって各医療圏の地域医療が成り立っている。岐阜大学病院は,病院の位置する岐阜医療圏の各病院・診療所と緊密な連携を取っているが,同時にがん,難病,肝疾患,エイズの診療拠点病院,高度救命救急センターでもあり,岐阜医療圏にとどまらず県とともに岐阜県全県下における医療体制の整備や構築に参画し,ドクターヘリの運用にあたっている。今後は各中核病院単独では対応が困難な多領域に関係する重症患者の診療や特殊な高度医療により重点を置くことにより,これまで以上に岐阜県全体の地域医療に貢献できるよう努めていきたいと考えている。
 岐阜大学医学部は医学科と看護学科を有しており医師,看護師をはじめとする医療人の育成は,地域医療への貢献として極めて重要であると考えている。医師不足の背景には単なる医師の絶対数の不足だけではなく,医師の都市への集中,勤務環境の比較的恵まれた特定の診療科への集中が存在し,国内における医師数の地域間格差,診療科間格差が生じている。岐阜県でも医師の絶対数の不足とともに,県内における地域間格差が存在し,地域医療を守ることが喫緊の課題となっている。かつて大学病院医局の弊害のみがクローズアップされた時期があったが,地域への医師派遣に医局が一定の役割を果たしてきたこともまぎれのない事実である。しかし,地域への医師派遣は医局の役割のある一面を見ているに過ぎない。医局の最も大切な役割はプロフェッショナルたるべき専門知識・技術とともに豊かな人格を持った医師を育成することにある。人間性豊かな医師の育成には,さまざまな医療現場を体験することが重要であり,都市部の大病院だけではなく,地域において地域と密着した医療現場での経験は必要不可欠である。若手医師に対して,長期的展望のもとに地域派遣を含むいくつものステップを提供し,個人の適性や希望を考慮しつつさまざまなキャリアパスを示しながら最終的にひとりの一人前の医師を育てていくこと,このことこそが医局がこれまで担ってきた役割であり,今後はこれまで以上に大学病院と医局,関連病院とが協同して医師の育成を進めていくべきであると考えている。
 岐阜大学医学部では平成20年より岐阜県からの修学金制度のもと地域枠学生を受け入れている。地域枠学生は初期臨床研修後9年間の岐阜県内での指定勤務が求められており,長期的な研修体制の構築が必要となっている。岐阜大学では地域枠学生はもちろんのこと,一般学生を含め将来岐阜県の医療を支える人材を育成すべく,平成19年に地域医療医学センターを開設し医学生および研修医を対象に地域医療実習や地域医療ゼミを行なってきた。医学部に入学した学生は地域枠学生,一般学生を問わずその多くが医療に対して非常に高い志を抱いている。彼らの志をぶらすことなく,医学部から卒後の初期研修,そして専門医研修へ と導いていくことこそが,たとえ時間はかかっても岐阜県の地域医療を守りそして発展させていくための最良の方策であると考え,岐阜大学医学部・附属病院では地域医療医学センターと卒後研修センターが中心となり,関連病院との連携のもと学生,研修医の指導,教育に取り組んでいる。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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